SSブログ

最近の南ア新作から マフィキゾロ、タンディズワ、ゾンケ [南部アフリカ]

「ミュージック・マガジン」6月号に載った石田昌隆さんの南ア・レポートを読んでいて、
最近ちっとも南ア音楽を聴いてないことに気付かされました。
んじゃ早速と、記事に出ていたマフィキゾロ、タンディズワの新作と、
ゾンケという女性シンガーのアルバムをピックアップ。
もう一人、パツーマという女性シンガーについても書かれていたんですけど、
この人のアルバムは見つかりませんでした。

Mafikizolo  REUNITED.JPG

“SIBONGILE”(02) “KWELA”(03)の二大傑作を残した
マフィキゾロの久々の復帰作“REUNITED”(13)は、
総天然色のレジャーランド仕立てなジャケットそのままのポップ・アルバム。
かつての名歌手レッタ・ンブルを思わす、おおらかな南ア・ポップぽいメロディが出てきたり、
60年代を回顧するようなトラックには心躍らされます。
でも、全体的には無機質な四つ打ちが耳残りする、相変わらずのクワイト・サウンド。
“Happiness” という曲では、タイトルとウラハラの絶望感漂うグルーヴに、
南ア社会の歪みを感じさせずにはおれません。
クワイトのサウンド・テクスチャーは、デジタル過剰な80年代末のズークにも似ていて、
正直このエレクトロな音には、もう飽きたなあ。

Thandiswa  IBOKWE.JPG

タンディズワの新作は、社会批判を戯画化したようなアートワーク。
メッセージ性の強いアルバムなのかもしれませんが、
歌いぶりはボンゴ・マフィン時代から変わらぬポップ・シンガー然としたもので、
その歌にレベル・ミュージック的な強度はまったく感じられません。
ベースが暴れるンバクァンガ調の曲があったりして、
マフィキゾロのクワイトの後で聴くと、生演奏のサウンドにはホッとしますが、
南アの伝統唱法を使って歌ってみても、タンディズワのヴォーカルの線が細すぎて、
南ア音楽の持つ逞しさが感じられないのは、残念至極。

Zonke Ina Ethe.JPG

う~ん、どうも決定打に欠けるなあと思っていたら、
初めて聴いたゾンケというシンガーが、目の覚めるような大当たりアルバムでした。
南アにこんな魅力的なネオ・ソウルがあったとはびっくりです。
ジャジーにしてクール、アーバンなメロウ・サウンドの洗練度合いはただごとじゃありません。
デヴィッド・T・ウォーカーに影響されたギターやスウィートな女性コーラス、
控え目なストリングスも贅沢なクロスオーヴァー・サウンドにもうメロメロ。
M10のアフロビート、M11のレゲエのリズム・アレンジも鮮やかです。

そんなソフィスティケイトされた生演奏をバックに歌うゾンケ・ディカナも、相当に魅力的。
さらりと吹き抜ける涼風のような歌いぶり、ふわりと軽やかな歌声は耳に優しく、
いつのまにか胸に取り付いて、離れることがありません。
ぼくの大好きなインディ・ソウルの女性シンガーで、UKバーミンガム出身、アトランタで活躍する
ジュリー・デクスターという人がいるんですけれど、ゾンケはジュリーによく似ています。
せつなく、狂おしい感情を胸に押し込めた楽曲にも、泣けてしまいます。

ここまで書けばおわかりかもしれませんが、音楽性に南ア色はまったくありません。
ていうか、これを聴いて南アの音楽とわかる人なんて、まずいないんじゃないかな。
コサ語と英語の両方で歌っているので、耳のいい人ならコサ語の吸着音に気付くかも。
全曲作詞作曲、しかもプロデュースまで務めるという
ゾンケ・ディカナ嬢、たいへんな才媛です。
Pヴァインかスウィート・ソウル・レコードあたりの目(耳?)にとまれば、
日本盤リリース間違いなしの逸品でしょう。

Mafikizolo "REUNITED" Universal CDRBL694 (2013)
Thandiswa "IBOKWE" Gallo SHELT006 (2009)
Zonke "INA ETHE" TMP TMP002 (2011)
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。