赤のエピフォン・リヴィエラ マジック・サム [北アメリカ]
また発掘もの? もういいよぉ、なんて思っていたマジック・サムのライヴ音源。
三十年以上も前の昔話ですけど、
マジック・サムのアン・アンバー・ブルース・フェスティバルでのライヴが
Pヴァインからレコード化された時は、そりゃあ大騒ぎになったもんです。
なんせ「100点満点で1万点」と噂された音源でしたからねえ。
けっしていい音質じゃないけれど、スタジオ録音では味わえないエネルギーに、
世界中のブルース・ファンが大カンゲキしたものです。
それに比べると、ここ近年相次いだプライヴェート録音の発掘は、内容はともかく、
アン・アンバー以上の音の悪さに、正直ヘキエキとしていました。
思えばマジック・サムが32歳の若さで亡くなって、もう45年が経つんですからねえ。
いまさら登場する音源に、そうそうお宝が残っているわけないって。
で、もういいよ、と思ってたんですが、これにはびっくりしました。
なんてクリアーな音。
サムのMCもリアルなら、ハイ・ピッチのヴォーカルの生々しさには悶絶です。
同時代のソウル・シンガーとオーヴァーラップする伸びのある歌いっぷりは、
まさしく31歳という若さが生み出した、新感覚のシカゴ・ブルースそのもの。
なんとこれが、ライヴ会場のコーヒーハウスに入り浸っていた常連の高校生が、
自分のテープレコーダーで録ったっていうんだから、驚愕。
どんなお坊ちゃま君だったんだろか。
ヴォーカルと各楽器に加え、ライヴ会場のルーム・マイクまで立てていたとは、
凝り性のアマチュア高校生ジム・チャーン君に、恐れ入るばかりです。
そんな理想的な条件で録られたギターは、目の前で弾いているのを見ているかのようで、
フィンガリングがまぶたに浮かぶようじゃありませんか。
ギター・ブギの爽快感ったら、もうたまらんですよ。
こんなにリズムが立っているギター、なかなか味わえません。
くわぁ~、こんなマジック・サムのライヴが聴けるなんて、夢のよう。
のちに歴史的傑作として名を残す“WEST SIDE SOUL” をリリースして、約半年後のライヴ。
シカゴの黒人クラブから飛び出し、
より広い層へアピールしようと活動の幅を広げていた時期で、
ミルウォーキーのコーヒー・ハウスで録音されたもの。観客はほとんど白人のようです。
その声と指先から、サムのやる気がほとばしるのをびんびん感じますね。
これほど希望と情熱にあふれたヴォーカルとギターを響かせていたサムが、
この一年半後に亡くなってしまうとは、なんて残酷な運命でしょうか。
表紙を飾るサムのライヴ・ショットも、新たなるマジック・サムの名盤にふさわしく、
うっとりと眺めてしまいました。これ、LPサイズで飾っておきたくなりますね。
サムが抱える赤のエピフォン・リヴィエラが、まぶしいです。
Magic Sam "LIVE AT THE AVANT GARDE" Delmark DE833
2013-12-18 00:00
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