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21世紀南アのシンガー・ソングライター ボンゲジウエ・マバンドラ [南部アフリカ]

Bongeziwe Mabandla  Umililo.jpg

スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド出演のため、
現在日本滞在中の南アのシンガー・ソングライター、ボンゲジウエ・マバンドラ。
もたもたしていて、今頃になってようやくデビュー作の南ア盤を手に入れたんですが、
その素晴らしさに、正直びっくりしてしまいました。

いわゆる南ア黒人音楽の系譜とは、ぜんぜん立ち位置の違うアーティストですけれど、
南ア音楽新世代を思わせる、フレッシュな才能を持つ逸材です。
現在の南ア音楽は、ロックもR&Bもヒップ・ホップもクラブ・ミュージックも
見事にガラパゴス化していて、それぞれのアルバムはハイ・クオリティでも、
これのどこが南アなのかと戸惑うほど、伝統と断絶したものが多いんですが、
このアルバムは違いました。

ボンゲジウエ・マバンドラは、ロキア・トラオレやチウォニーソが登場した時のような、
旧来の伝統のくびきを解かれた風通しの良さを感じさせつつ、
生まれ持った南アフリカらしさが自然に滲み出ているところに魅力をおぼえます。

ナチュラルなテイストを持つ歌の響きのなかに、センシティヴな感性を
ストレイトに伝えることのできるシンガー・ソングライターで、子守唄を思わせる優しいメロディは、
生まれたばかりの赤ちゃんを持つお母さんにも聞かせてあげたくなります。
「アフリカン・フォーキー」とひとことで片づけるには、あまりにもったいない才能の持ち主で、
線の細い声が弱みとならず、この人の音楽のなかで個性として発揮されています。

ヴィブラートのかかったボンゲジウエのカスレ声をデリケイトに包み込む、
弦や木管を配したアクースティックなプロダクションが、また鮮やか。
サウンドが厚ぼったくならないよう、細心の注意が払われ、音が選び抜かれているんですね。
ダブやエレクトロにラップまで配してなお、この静謐な世界を創り上げたのは見事というほかなく、
このプロデューサー、凄腕だと思います。

せつなさ、さみしさ、やるせなさ、そんな繊細な感情を溢れさせるメロディが続くなか、
陽性なレゲエのリズムやメロディがふと表われると、
雲の合間から、ぱあっと日の光が射し込んでくるかのようで、心がほっこりとします。
こんなところにも南アらしさが無理なく溢れていて、21世紀的な新しさを感じます。

Bongeziwe Mabandla "UMLILO" Sony CDSTEP139 (2012)
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Tact

プロデューサーのパウロさんはモザンビークの人で、かの地の人気レゲエ•ダブバンド"340ml"のドラマー、イベントプロデューサーでもあります。

モザンビークツアー時に何度かお会いしたんですが(あまりしっかり話は出来なかったんですが)彼の地に於いて物凄くモダンな感覚を持った方だと思いました。おそらく高いレベルの教育も受けてらして、出自も相当良い方なのではと思います。

ボンゲは殆ど少年の様なかなり純朴なタイプなので、彼の繊細なフィーリングを上手く活かしてくれる素晴らしいプロデューサーに会えたと思います。南アやモザンビークを含む南部アフリカの一部の風土には、意外とある種の静謐さを重んじる東アジア的(?)心の機微がある様に思います。

このアルバム、日•台•韓あたりではとてもウケが良いのではないでしょうか。
by Tact (2014-09-10 03:27) 

bunboni

ほー、モザンビークのプロデューサーなんですか。
このアルバムの静謐さは、中国・香港あたりでも通じますよね。ボンゲくん、才能あるいいプロデューサーと出会えましたね。
スキヤキで観たボンゲくんは、なんだか女の子みたいに見えてしかたありませんでした。両足のかかとが付くように足をぴたっと揃えた立ち姿なんて、まるで女性シンガー・ソングライター的たたずまい。ほっそりしてるものだから、余計でした。
by bunboni (2014-09-10 21:35) 

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