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エリトリアン・ポップのベスト・アルバム セラム・イエマネ [東アフリカ]

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エチオピア音楽がこれだけ盛り上がってるっていうのに、
お隣エリトリアはといえば、CDリリースがぱったりと止まってしまい、
ダウンロード販売ばかりになってしまいました。
フィジカル派の自分としては、寂しいばかりです。

ズドンズドンと野太いツービートが打ち込まれるティグリニャ歌謡は、
エリトリアのティグリニャ人ではなく、エチオピアに住まうティグリニャ人歌手のCDでしか
聞けなくなってしまったと、落胆してたところだったんですけど、
長年の渇きを癒す、とびっきりのアルバムを発見しました。

それがこの、ローマで暮らす若いエリトリア移民の女性歌手、セラム・イエマネのデビュー作。
おととしの暮れにイタリアでリリースされていた本作の存在を、つい最近になって知りました。
デビュー作にして2枚組のこの大作、1枚はティグリニャ伝統歌謡編、
もう1枚はアフロ・ポップ編という意欲作となっています。

ティグリニャ伝統歌謡編では、例のツービートの「どすこいグルーヴ」をたっぷり楽しめるんですが、
嬉しいのは、生のホーン・セクションをたっぷりとフィーチャーしていること。
現在ではエリトリアに限らず、エチオピアでも生のホーン・セクションはレコーディングの場から消え、
シンセで代用するのが当たり前になっているので、これには大カンゲキです。
弦楽器のクラールや太鼓のケベロなどの伝統楽器を配した、
野太いティグリニャ・サウンドにのせて、苦みばしった声で歌うセラム嬢のヴォーカルも絶品で、
若いながら味わいのあるノドと巧みなコブシ回しに、すっかりトリコとなりました。
1曲レゲエにアレンジした曲があるのも、気が利いています。

そして、もう1枚のアフロ・ポップ編がまた秀逸。
こちらでもホーン・セクションと生のドラムスを配して、
「エリトリア・ミーツ・地中海サウンド」とでも形容したい鮮やかなプロダクションで聞かせてくれます。
これほど贅沢なサウンドは、ここ最近のエチオピア音楽でもめったに聴けませんよ。

ティグリニャ独特のメロディを前面に押し出しながら、多彩なリズムやサウンドとミックスさせ、
これまで誰もやったことのない、フレッシュなエリトリアン・ポップスを生み出しています。
エリトリアのシンガーで世界デビューした人に、ファイティンガがいましたけど、
セラム・イエマネがファイティンガを凌ぐ才能の持ち主であることは、このデビュー作からも明らか。
エリトリア初のワールド・クラスのシンガーとして、注目すべき人です。

Selam Yemane "NAFIKE" Erythros no number (2012)
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