コスタ・リカの古老が歌うカリプソ ウォルター・ファーガソン [中央アメリカ]
コスタ・リカのカリプソ? え~、コスタ・リカにカリプソなんてあるの!?
なんでもコスタ・リカのカリブ海沿岸部リモン州には、
ジャマイカ黒人の移民が大勢いて、カリプソが英語で歌われてきたのだとか。
コスタ・リカにカリプソがあることを知ったのも初めてなら、
コスタ・リカ盤を手に入れたのも初めてで、思わず前のめりになっちゃいましたが、
ギター1本で歌う古老の弾き語りが、これまたカルトーラ並みの味わい深さで、
すっかり舞い上がっちゃいました。
こりゃあ、大発見。ベリーズのガリフーナ音楽を知った時以来の驚きです。
カリプソ・シンガー・ソングライターのウォルター・ファーガソンは、19年パナマの生まれ。
コスタリカのリモンに移り住んで育ち、70年代まで自分の育った村で、
観光客相手に歌ったり、自分のカリプソを録音したカセットを売ってきたとのこと。
82年にアメリカの音楽学者がファーガソンを「発見」し、
スミソニアン・フォークウェイズからアルバムを出したこともあったそうですが、
録音状態が悪く、本領発揮とはいかなかった様子。
その後86年に、コスタ・リカの研究者によって2作目が制作されたものの、
これまた話題になることもなく、終わってしまったんだそうです。
長く引退状態だったファーガソンさんを説得し、
村を出たがらない彼のために、録音機材やエンジニアを村に運び込んでレコーディングしたのが
02年の“BABYLON” で、リラックスした環境で録音したおかげか、
素晴らしく力の抜けた、自然体な歌を聞かせてくれます。
これに気をよくしたのか、翌年続けてレコーディングされた“DR. BOMBODEE” も
すこぶる上出来。ギター一本の弾き語りという地味な内容にもかかわらず、
まったく聞き飽きることがありません。
年輪を感じさせながらも、枯れすぎていない歌の味わい深さがたまりません。
ギターのリズムは、トリニダッドのカリプソより平明で、
ジャマイカのカリプソやメント、バハマのグンベイを思わせる、
のほほんとしたレイドバック気分がなんともいい感じです。
ソンやトローバを歌うキューバのお爺ちゃんと、オーヴァーラップするような感じですね。
全曲歌詞付きのライナーは美しくデザインされ、パッケージも丁寧な仕事ぶりです。
こんな素晴らしいCDが十年以上も前に出ていたのに、
まったく知られぬままだったのも驚きですが、
廃盤となる前に聴くことができたのは、すごく喜ばしいこと。
CDを見つけ出し、日本に輸入してくれたアオラ・コーポレーションさんに拍手です。
Walter “Gavitt” Ferguson "BABYLON" Papaya Music no number (2002)
Walter Ferguson "DR. BOMBODEE" Papaya Music no number (2003)
2014-08-21 00:00
コメント(2)
僕もこの2枚をこの夏に入手して、愛聴しています。Papaya MusicのCDはどれも愛情を込めて丁寧に作られていて、好感が持てますね。
同レーベルから出た"Calypso Limon Legends"もとても気に入ってます。
by なる (2014-08-21 21:49)
本当ですね。こういう作品を見ると、CD制作に関わるスタッフたちの音楽への愛情が伝わってきて、ジンときます。
"CALYPSO LIMÓN LEGENDS" は次回の記事で書きます。
by bunboni (2014-08-21 22:05)