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宅録ヒップライフのクリエイター アタ・カック [西アフリカ]

Ata Kak.jpg

まったく、しょーもねぇなー、こんなもんCD化して……。
悪態‌つきつつ、顔のニヤニヤが止まりません。
オウサム・テープス・フロム・アフリカの新作は、ガーナの「ど」チープな宅録ヒップライフ。
B級どころかC級未満の内容で、わざわざCD化する意義なんて、これっぽっちも見つかりませんが、
くだらん!と一刀両断する気にはなれない、なかなかに味のある憎めないシロモノを、
このレーベルはよくもまあ拾い上げてくるもんだと、感心してしまいます。

本作の主役アタ・カックは、60年、ガーナ内陸の都市クマシの生まれ。
86年にドイツへ移住し、その後89年にカナダのトロントへ居を移したという経歴は、
彼も80年代ガーナの経済危機で、職を求めて国外へ脱出した若者の一人だったのでしょう。
ドイツ時代は、マイケル・ジャクソンやKC&ザ・サンシャイン・バンドなど、
アメリカのディスコ・ミュージックに夢中となっていたようです。
ガーナ脱出組の若者がドイツでシーンを盛り上げた
ボガ・ハイライフともリンクしていたんじゃないかと思える音楽性の持ち主ですが、
ライナーにはそのあたりのことは言及されていません。

トロントではハイライフ・バンドに在籍していたそうですが、ハイライフよりレゲエをやる方が楽しく、
ジェイムズ・ブラウンやビージーズのようなポップスを、
ガーナの音楽へ取り入れることに熱をあげていたという、典型的な洋楽カブレさん。
そんなアタが、グランド・マスター・フラッシュにインスパイアされて、
トゥイ語でラップするスタイルを生み出したというのは、ごく自然な成り行きに思えます。
ここで面白いのは、本国ガーナのヒップライフの存在をまったく知らずに、
このラップ・スタイルを生み出したというところ。

91年暮れに自作曲をレコーディングしようと思い立ち、中古の録音機材などを揃えて、
アシスタント・エンジニアの経験を持つ友人の力を借りながら制作したのが本カセットで、
94年に50本ほど作ったものの、たったの3本しか売れずに、
残りは家族や友人に譲ったというのだから、なんともはや。
ブライアン・シンコヴィッツさんは、02年にケープ・コーストの露店で買ったんだそうです。
そんな3本しか売れなかったカセットが、どうやって故国ガーナへ渡ったんでしょうかねえ。

アタ・カックに女性コーラス一人付くだけの打ち込み主体のプロダクションは、
音質含めチープそのものなんですけど、
トゥイ語早口ラップのリズミカルなフロウはかなり面白く、
アフリカン・ラップの中で随一と言わないまでも、相当にユニークなものです。
ハイライフで馴染み深いガーナ臭丸出しのメロディがまた嬉しくって、
2曲目の“Moma Yendodo” や5曲目の“Daa Nyinnaa” は、バック・トラックのコード感や
女性コーラスのメロディがボガ・ハイライフそのものですね。

なるほどDJイヴェントなどで回せば、かなり話題になりそうな本作、
ちょうどブライアン・シンコヴィッツさん来日中で、先週土曜日に新宿でDJしたしようですけれど、
最新作の本作もプレイしたのかな。

Ata Kak "OBAA SIMA" Awesome Tapes From Africa ATFA014 (1994)
コメント(2) 

コメント 2

イワタニ

お忙しい中、失礼します。
なんだか、ジャケの写真を見ただけでマイナーなサウンドが出てきそうな感じですね。
でも、何故かET・メンサーの4枚盤より、こちらの盤を聴いてみたくなっちゃうんですよね。内容はET・メンサーの方が良いと分かっているのにですよ。そして聴いた後に「あ~あ、ET・メンサーにしとけば良かったなあ~」と後悔して棚に仕舞いこんじゃうんだよなあ。ブランド品より、ガラクタに魅力を感じてしまうんですよ。性格でしょうか?
ガーナ脱出組の若者がドイツでシーンを盛り上げた「ボガ・ハイライフ」とはなんでしょうか?

by イワタニ (2015-03-23 12:51) 

bunboni

お返事を書き始めたら、長くなりそうなので、次回の記事にしたいと思います。
少しお待ちくださ~い。
by bunboni (2015-03-23 21:06) 

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