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南部アフリカへの帰還 モコンバ [南部アフリカ]

Mokoomba  LUYANDO.jpg

ジンバブウェのモコンバは、ひさびさに現れたアフリカのフレッシュな新人バンドでした。
5年前、クリスマスも過ぎた年の瀬に聴いたばかりの前作“RISING TIDE” を、
その年のベスト・アルバムに無理矢理突っ込んだのを思い出します。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-12-29
このブログでは、年の最後にベスト・アルバムを選んでいますが、
こういう融通が利くのがブログのいいところで、
雑誌だったら1年送りになっちゃいますからねえ。

あのアルバムの良さは、インターナショナルをしっかりと意識した
プロダクションが施されていたことにありました。
アフリカン・ポップスはいつの頃からか、
海外でも当たる作品を作ろうという野心が失われてしまって、
<グローカル>の傾向をいいことに、内に閉じた制作態度が残念でなりませんでした。
そんな風潮のところに登場した、
世界へ飛び出さんとするこのアルバムの姿勢に、すごく共感したんですよね。

ただその後、YouTubeで彼らのライヴの様子などを見ると、
このバンドの素顔は、南部アフリカによく見られるギター・バンドで、
ザンビアのカリンドゥラあたりに近い素朴な音楽性は、
あのアルバムとかなり落差があることがわかりました。

“RISING TIDE” が思いっきりよそ行きに作られていただけに、
これは次作は難しそうだなあと、実は心配していたのでした。
ですが、どうやらぼくの心配は、杞憂だったようですね。
やっぱりこのバンド、並みじゃないですね。地力があります。
プロデュースの手腕だけではない、確かな実力を見せつけてくれました。

今回のアルバムは、前作とはがらりと表情を変えて、
全体をアクースティックなサウンドにシフトし、
伝統リズムを大幅に導入して、南部アフリカらしいコーラスを多用しています。
一部にエレクトロも取り入れた汎アフリカン・ポップス・サウンドの前作から、
南部アフリカの伝統に根ざした路線へ様変わりして、
奥行きのあるアルバムを作り出すのだから、大したものです。

前作の破天荒なマティアス・ムザザのリード・ヴォーカルに圧倒された耳には、
第一印象で大人しくなったように感じてしまいますが、
じっくりと聴けば、ムザザのヴォーカルは、変わらずにエネルギッシュですよ。
キャッチーなサウンドで、ムザザのヴォーカルを刺激的に演出していた前作と違い、
柔らかなコーラスとの掛け合いで、味のあるノドを聞かせてくれているじゃないですか。

前作では多くのゲストを起用していましたけれど、
今回は1曲目で南アのサックス奏者スティーヴ・ダイアーがフルートで参加したのみ。
スティーヴ・ダイアーといえば、最近オリヴァー・ムトゥクジと共演していることを、
以前記事にも書きました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-11-22

ヨーロッパ・ツアーを成功させ、あらためて南部アフリカへ帰還して、
自分たちのルーツに立ち返り、音楽性を磨き上げたのがこの新作なのですね。
5年のインターヴァルを経て、じっくりと練り上げられたアルバムで、
バンドとしてもさらに成長したことをうかがわせる快作です。

Mokoomba "LUYANDO" Outhere OH030 (2017)
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