台湾語+ネオ・ソウル 陳以恆 [東アジア]
まさに、ディアンジェロの“VOODOO” の申し子世代のネオ・ソウルだね、これは。
94年生まれのシンガー・ソングライター、陳以恆(チェン・イーヘン)のデビューEP。
たった4曲、13分足らずのアルバムなんですけれど、
キラッキラ輝く才能に感じ入って、何度もリピートしてしまいます。
ロバート・グラスパーを参照した演奏力も高く、サウンドはハイ・クオリティ。
いやぁ、ほんとに台湾インディ、めちゃくちゃレヴェル高いな。
ここのところ立て続けに買っていますけど、ハズレがまったく無いもんね。
おかげで、ずいぶん台湾のオンライン・ショップを知ることができました。
本作は3年前のEPで、そろそろフル・アルバムを出してもよさそうなものだけれど、
それらしいニュースはなく、じっくりと音楽制作をしているのかな。待ち遠しいですね。
チェン・イーヘンは早稲田大学へ留学していて、東京に住んでいたんだそう。
日本とも縁があるのなら、リニオンが THREE1989 とコラボ曲をリリースしたように、
日本のアーティストとコラボする可能性があるかもしれませんね。
ちなみにこのデビューEP、全曲台湾語で歌って、現地で話題になったのだそうです。
94年生まれで台湾語を喋れるって、ちょっとビックリなんですが、
やはり後学で修得したんだそう。そりゃそうだよね。
台湾では56年に学校で台湾語が禁止されて以降、
北京語(台湾国語)化が進められたので、台湾語を喋れるのは老人だけ。
台湾語が解禁されたのは、戒厳令が解除される87年になってからのこと。
なんでも大学に入り、ベネディクト・アンダーソンのナショナリズムや、
エドワード・サイードのポスト・コロニアリズムを学んだことを契機に、
自分の創作活動を省みて、台湾語で歌うことに自覚的になったそうです。
90年代に新台湾語歌曲運動が盛り上がり、
林強や陳明章といった若いアーティストたちが台湾語で歌い始め、
日本でもワールド・ミュージック・ブームの流れで聞かれるようになったことがありました。
当時聴いたCDでは、黑名單工作室の『抓狂歌』(89)が忘れられませんけれど、
あのとき以降、台湾のポップスをフォローしてこなかったもんで、
チェン・イーヘンの試みが、この当時の新台湾語歌曲運動と連続性があるのか
どうかが興味あるところだけど、そのあたり誰かインタヴューしてくれないかなあ。
さきほど挙げた、台湾オルタナティヴの一大傑作『抓狂歌』だって、
チェン・イーヘンが生まれる前のアルバムですからね。
いずれ出るフル・アルバムでも、台湾語+ネオ・ソウルが聞けるかな。
陳以恆 「但係我袂驚惶」 陳以恆 no number (2019)
黑名單工作室 「抓狂歌」 滾石 RD1052 (1989)
2022-11-11 00:00
コメント(2)
陳以恆、カッコいいですね。台湾インディの他の盤の紹介も楽しみにしております。台湾語で歌うモダンなポップスだと、鄭宜農の今年のアルバムを愛聴しています。彼女も台湾語はネイティブではないそうです。
台湾に旅行に行くと、台湾語は町中でよく耳にするので、珍しい言語ではないと思っていました。
by アニキ (2022-11-20 23:59)
台湾語が町中でよく耳にするほど話されているとは知りませんでした。台湾もずいぶん変化しつつあるんですね。
by bunboni (2022-11-21 05:48)