エレクトリック・ギター史の重要ギタリスト フロイド・スミス [北アメリカ]
ジャンプ・ブルースのギタリスト、フロイド・スミスがどういう人なのか知らないまま、
これまで72年録音のブラック&ブルー盤を聴いていました。
そのフロイド・スミスを、ワダマコトさんが『ブルース&ソウル・レコーズ』170号の特集
「ブルースこの人この一曲」で、「諸説あるものの、‘Floyd's Guitar Blues’ は、
ジャズ史上最初にエレクトリック・ギターが大フィーチャーされた楽曲
として記録されている」と書かれているのを読んで、ビックリ。
なんでも39年3月16日、
アンディ・カーク&ヒズ・12クラウズ・オヴ・ジョイ名義で録音した
‘Floyd's Guitar Blues’ で、電化ラップ・スティール・ギターを弾いていたんですと。
39年って相当に早い話です。いち早く33年に電化ラップ・スティールを導入していた
ハワイアンから、アイディアを頂戴したらしい。
さっそくYouTubeで検索して聴いてみましたが(便利な時代だ)、
ギュイーンとしつこくスライドさせながら、特徴的なブルースのリックを炸裂させています。
これは確かに、エレクトリック・ギターの歴史に残る名録音といえそうだなあ。
ソロ録音が少なく、ほとんど知られていない人だけに、こんな重要人物だったとは驚きです。
そもそもフロイドが、
アンディ・カークという名門楽団の出身だということも初めて知りました。
ぼくがフロイドを知ったのは、ワイルド・ビル・ディヴィスのギタリストとしてです。
ルイ・ジョーダンのティンパニー・ファイヴのピアニストだった
ワイルド・ビル・デイヴィスは、40年代末にオルガンに転向し、
51年にギターとドラムスによるオルガン・トリオを結成して、
のちのジャズにおけるオルガン・トリオのひな型を作ったことは、よく知られた話。
史上初のジャズ・オルガン・トリオのアルバムと目されている、
55年のバードランドでのライヴ録音は、ジャンプ・ブルースの名盤でもあります。
そこでギターを弾いていたのが、フロイド・スミスでした。
ややギターがオフ気味の録音ですけれど、ラップ・スティールではなく、
エレクトリック・ギターによる ‘Floyd's Guitar Blues’ を聴くことができます。
そしてこのライヴ盤の3人が、のちの72年にブラック&ブルーでセッションを行い、
フロイド・スミスとワイルド・ビル・デイヴィスそれぞれの名義で、
2枚のレコードを出したんですよね。
ワイルド・ビル・デイヴィスの方は87年にCD化されましたが、
フロイド・スミスの方は遅れて、96年になってCD化されました。
ブラック&ブルー盤では、ジャンプ・ブルースにビバップを織り交ぜたギターに、
新たにウェス・モンゴメリーの影響を受けたオクターヴ奏法も聞かせていて、
進取の気性に富んだフロイドらしさが発揮されています。
Floyd Smith "RELAXIN’ WITH FLOYD" Black & Blue BB875.2ND219
Wild Bill Davis "AT BIRDLAND" Columbia COL471427-2 (1955)
Wild Bill Davis Trio "IMPULSIONS" Blak & Blue 233037
2023-04-06 00:00
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