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バグパイプでフリー・ジャズ マット・ムンツ [北アメリカ]

Mat Muntz  PHANTOM ISLANDS.jpg

オドロキのバグパイプ・ジャズ。
これが、とてつもなく面白い。
バグパイプでジャズといえば、昔ルーファス・ハーリーなんて人がいましたけれど、
バグパイプという楽器の特性を生かしきれなくて、
ただ変わった楽器でジャズをやるだけの域を超えられていませんでした。

ところが、初めて知るクロアチアのバグパイプという、
プリモルスキー・メーを演奏する、このマット・ムンツのアルバムは違います。
テナー・サックス、オーボエ、クラリネットを加えた4管編成で、
バグパイプの微分音に、チューニングの狂った(もしくは微分音チューニング?)
ギターを絡ませて複雑な色合いを生み出し、
野性味たっぷりの集団即興を繰り広げています。

フリー・ジャズにバグパイプの微分音を落とし込んだアプローチがとても斬新で、
不安定で奇妙な音列を、歪んだ響きがエネルギッシュに演奏するさまに、
ドキドキが止まりません。

ゆったりとしたテンポで、幽玄なメロディを奏でる曲では、
バグパイプのドローンとドラムスのロールが不穏なムードをまき散らし、
魔界に引き込まれていくような怖さを感じさせます。
オーボエとクラリネットが上昇音をひたすら繰り返して、
ドローンのような効果をもたらしたり、
精緻に構成されたホーン・アンサンブルと、
ダイナミックなインプロヴィゼーションの共存が魅力ですね。

バグパイパーでベーシストのマット・ムンツは、
スコットランドのハイランド・バグパイプ、韓国のピリやテピョンソ、
ケルトのカルニクスの音楽家たちと組んだザ・ヴェックス・コレクションという、
異文化ダブル・リード楽器ユニットともいえるグループでも活動していて、
こちらでは、かなり実験色の強い演奏を繰り広げています。

アルバムの最後は、バグパイプとドラムスが丁々発止を繰り広げる
奄美の古謡「おぼくり」。朝崎郁恵が歌って、広まった曲ですね。
この曲を取り上げたのは、クラリネットの上坂悠馬のアイディアかな。
91年ロンドンに生まれ、父親の仕事の関係で
デトロイトで育った上坂のクラリネットも、大活躍していますよ。

Mat Muntz "PHANTOM ISLANDS" Orenda 0102 (2023)
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