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ボヘミアンのサンバ・ソングライター ウィルソン・バチスタ [ブラジル]

Wilson Baptista  EU SOU ASSIM.jpg

ラパ育ちのサンビスタで、悪党と交友関係をもって十代の頃に何度も逮捕され、
サンバ・ジ・ブレッキなどマランドロ気質のサンバを数多く生み出した作曲家、
ウィルソン・バチスタ(1913-1968)の生誕110周年記念作が出ました。
シロ・モンテイロが歌った ‘Oh, Seu Oscar! ’ 「おい、オスカルくん」の作者ですよ。

ウィルソン・バチスタというと有名なのが、ノエール・ローザと罵り合った大論争。
ヴィラ・イザベルの街を称えるために他の地区をけなしたのが発端となって、
サンバによる悪口の応酬となり、ウィルソンはノエールの顎のない顔を攻撃して、
「ヴィラのフランケンシュタイン」というサンバまで書くに至ります。
二人の論争は、ウィルソンが作曲した ‘Terra De Cego’ に
ノエールか歌詞を書いて終止符が打たれて、二人の間に友情が芽生えます。

Francisco Egydio Roberto Paiva.jpg

のちになって、この論争で生まれた曲が56年にオデオンでレコード化されました。
論争とは関係がないノエールの ‘João Ninguém’ も収録されていますが、
ノエールとウィルソンがバトルしたサンバを、
フランシスコ・エジディオとロベルト・パイーヴァが歌い、
レコードのジャケットには、ノエール(左)とウィルソン(右)が描かれました。
今回のアルバムには、この論争で生まれた ‘Conversa Fiada’ が取り上げられ、
なんとウィルソン本人のヴォーカルに、
新たに伴奏をつけたヴァージョンを聴くことができます。

今回の生誕110周年記念作が、過去に出された85年フナルチ盤や、
11年ビスコイト・フィーリョ盤のソングブック集と違うのは、
収録曲の半数でウィルソン・バチスタの声を使い、新たに伴奏をつけたところ。
これが画期的といってもいいほど、成功しているんですよ。

1曲目のエレピとハモンドにホーンズを配した洒脱なアレンジにのせて、
マランドラージェンたっぷりのヴォーカルを聞かせる ‘Meu Mundo É Hoje’ ではや完敗。
続くサンバ・ショーロの伴奏にのせた ‘Nega Luzia’ に夢見心地です。
半世紀以上も昔の録音と、かくもいきいきと共演できるものなのかあ。
‘Chico Brito’ や ‘São Paulo Antigo’ なんて、 今の録音に聞こえますよ。
ウィルソンのそっけない無頼な歌いぶりには、かすかな哀感が漂っていて、
そのやるせない情感にシビれます。

2枚組全30トラック(メドレーあり)中13トラックが、ウィルソンのヴォーカルで、
ほかはネイ・ロペス、ジョイス・モレノ、クリスティーナ・ブアルキ、ジョアン・ボスコ、
フィロー・マシャード、ネイ・マトグロッソ、ドリ・カイミなどが歌います。
サックス奏者エドゥ・ネヴィス、バンドリン奏者ルイス・バルセロス、
ギタリスト、パウロ・アラゴーンなど、多くのアレンジャーを迎え、
手を変え品を変えの伴奏も楽しいことこの上なし。

生誕〇〇周年の便乗作に感心したためしがないんだけど、これは買いです!

Wilson Baptista "EU SOU ASSIM" SESC CDSS0180/23 (2023)
[10インチ] Francisco Egydio, Roberto Paiva "POLÊMICA" Odeon MODB3033 (1956)
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