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オトナが聴く子守歌 メレディス・ダンブロッシオ [北アメリカ]

Meredith D'Ambrosio  LOST IN HIS ARMS.jpg   Meredith D'Ambrosio  ANOTHER TIME.jpg

メレディス・ダンブロッシオ。
その名を口にするだけで胸の奥がツンとなる、
ぼくにはかけがえのない人。そんな歌手、そうそうはいません。

ピアノの弾き語りで、古いスタンダード・ナンバーを歌う人です。
ジャンルでいうなら、ジャズ・ヴォーカルになるのでしょうが、
どうもこの人の音楽を「ジャズ」と呼ぶのは、
座りの悪い感じがするんですよね。

メレディスの自己表現をしない、自意識を捨てたその歌に殉じる姿勢は、
古謡や民謡を歌うトラッド/フォーク・シンガーに近いものがあります。
あまり知られていない曲を多く取り上げ、ヴァースから丁寧に歌うのも、
古老から歌を採集して歌うフォーク・シンガーの作法に似ています。

80年に出たメレディスのデビュー作は、静かなる衝撃でした。
茶1色に白抜き文字だけのそっけないジャケットは、
いかにも自主制作といった装丁で、
およそ女性ヴォーカル・ファンの関心を呼ぶものではなかったからです。
この当時の女性ジャズ・ヴォーカルといったら、中高年オヤジが、
昔のレア盤だの美人ジャケだのをほじくり返していたジャンルでしたからねえ。

そもそも20代前半の若造が聴くような音楽じゃなかったんですが、
当時のパンクやニュー・ウェイヴに背を向けてた自分にとっては、
こちらの世界の方が好ましく、無名の新人の超地味なジャケットは、
女性ヴォーカル・マニアのオヤジたちを相手にせず、
耳のある音楽ファンだけをトリコにする風情があって、夢中にさせられました。

メレディスの落ち着いた声質と温かな歌声には、抗しがたい磁力があります。
胸の奥底に沈殿していくような歌声は、一度聴いたらもう離れられません。
歌詞世界に没入するような歌でもありながら、その世界に拘泥することなく、
どこかさっぱりとしていて、すがすがしい。そんな歌いぶりがすごくいいんです。
ハートウォーミングなメレディスの歌は、オトナが聴く子守歌のようです。

80年のデビュー作は、メレディスのピアノ弾き語りを軸に、
曲によってベース、ドラムス、ギターがわずかに加わりますが、
81年の “ANOTHER TIME” はメレディス一人の弾き語り。
どちらも完全に歌だけを聞かせる作りで、ソロ演奏などはまったくありません。
この2枚に魂抜かれて、生涯の宝物となりました。

このあとメレディスは、フィル・ウッズやハンク・ジョーンズが参加した
82年のパロ・アルト・ジャズ盤でジャズ・シーンで一定の評価を得るんですが、
ぼくがお付き合いするアルバムはこの1・2作のみ。
ひさしぶりに聴き直して感極まってしまって、そういえばその後を知らないままだったので、
ちょっと調べてみたら、80を過ぎた今も、新作を出し続けているんですね。

お話戻して、この2作とものちにサニーサイドがCD化しましたが、
デビュー作の方はジャケットが差し替えられました。
せっかくだからここでは、懐かしいLPの方の写真を挙げておきましょう。

[LP] Meredith D'Ambrosio "LOST IN HIS ARMS" Spring SPR1980 (1980)
Meredith D'Ambrosio "ANOTHER TIME" Sunnyside SSC1017D (1981)
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