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エチオ・フォーク・ジャズ ネガリット・バンド [東アフリカ]

Negarit Band.jpg

「エチオソニック」シリーズの新作がひさしぶりに出ました。
フランシス・ファルセトが07年にスタートさせた「エチオソニック」シリーズは、
革命前のエチオピア音楽にスポットを当ててきた「エチオピーク」シリーズと違い、
現在進行形のエチオピア音楽から、
ファルセトの眼鏡にかなったアーティストをピックアップしています。

ユーカンダンツやトリオ・カザンチスを紹介してきたこのシリーズ、
いわゆるコンテンポラリーなポップスならば、
エチオピア現地のレコード会社に任せとけばいいので、
オルタナ的存在のバンドをセレクトしているのがミソ。
今回のネガリット・バンドは、新世代のエチオ・ジャズ・バンドで、
現地ではなかなかレコーディングの機会が与えられない、
インストのバンドをフックアップしています。

ユーカンダンツやトリオ・カザンチスの衝撃に比べれば、
ネガリット・バンドのソフィスケートされたエチオ・ジャズは、
フュージョン志向のエチオピア現地のトレンドと一にするもので、
ファルセトがライナーで言う「スムース・ジャズが中心の
凡庸なエチオピア・ジャズ・シーンの中では特別な存在」とは残念ながら思えません。
じっさいフュージョン的な甘さに流れるアレンジの曲もあって、
エチオピア音階をまったく使わないギター・ソロなんて、ただのフュージョン・ギター。
ファルセトがディスってる傾向は、このバンドにもあることは否定できないでしょう。

ドラムス、ベース、ギター、キーボード、サックス2、トランペットにワシント(笛)の
8人編成で、マシンコ、クラール、ケベロが加わる曲もあります。
エッジの利いた演奏を聞かせる曲もあるんですが、
それを全編で徹底させられなかったところは、やや残念かなあ。

とはいえこのバンドの強みは、リーダーのドラマー、テフェリ・アセファが、
少数民族の音楽に着目して、フォークロアなリズムを取り入れていることでしょう。
特にテフェリがバンド結成以前に、エチオピア南部の音楽を調査したことが
強く影響しているとみえ、ガモ(‘Ethiopia Danosae’)、
イェム(‘Ethiopia Danosae’)、コンソ(‘Kaffa Chafo’)、
ゲデオ(‘Tedayo’)など、南部の諸民族のリズムを多く取り上げているのは、
他にはないネガリット・バンドの個性ですね。

‘Lalibela’ では、ラリベロッチ(アズマリと並ぶエチオピアの音楽職能集団で、
曲名のラリベラは単数形)の歌声をサンプリングして使っていて、
クレジットを見たら、このサンプルは川瀬慈さんが録音したものなんですね。

エチオピア・フォーク・ジャズとして、もう一皮むけてほしいバンドです。

Negarit Band "ORIGINS" Buda Musique 860384 (2023)
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