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心が整う音楽 カントゥルム・ドンマン [東南アジア]

Kantrum Dongman  NORTHERN KHMER SPIRIT MUSIC IN THAILAND.jpg

ヨガを終えた後にも似た、心と呼吸が整うアルバム。
その音楽は、タイ東北部スリン県、スリサケット県、ブリーラム県、
ウボンラーチャターニー県に暮らすクメール人が伝えてきた儀礼音楽のカントゥルム。

クメール人の国カンボジアで、
クメール・ルージュの弾圧によって滅ぼされたカントゥルムのもっとも古いスタイルが、
タイでわずか140万人の少数民族のクメール人によって継承されてきたんですね。
タイのクメール人は、6世紀のチェンラ王国にさかのぼる
初期のクメール国家を築いた人々の末裔といわれています。

カントゥルムといえば、80年代半ばにカントゥルム・ロックで旋風を巻き起こした
タイのダーキーがまっさきに思い浮かびますけれど、ダーキーがやっていたのは、
カントゥルムをエレクトリック化して、ぐっと現代化したカントゥルム・プラユック。
それに対してここで聞かれるのは、
もっとも古く伝統的なカントゥルム・ボランと呼ばれるもので、
祖先の霊を招き、生者を癒し、祝福するために演奏される音楽で、
アニミズムの色彩の強い儀礼音楽です。

カントゥルム・ドンマンは、スリン県ドンマン村出身の老若7人のグループ。
ダブル・リードの笛、胡弓が奏でるメロディーに合わせて、
歌い手がコブシをたっぷりと利かせながら歌い、
その合間を縫うように、ゆったりとおおらかなリズムで太鼓が打たれます。
場を清めるような清廉さのある音楽で、ゆるやかなリズムは、
聴き手の緊張を解きほぐし、心を落ち着かせる効能があります。

はじまりの2曲は、ワイ・クルと呼ばれる儀式の始まりに演奏される曲だそうで、
3曲目から大小のシンバルが加わり、テンポも少し早められて
華やいだ雰囲気が醸し出され、リズムにも変化が表われてきます。
歌い手を囃すかけ声がかけられて、踊りのための曲のようです。

リズムがまるっこくて、これほど柔らかなグルーヴというのも、
めったに味わえるもんじゃないですね。
曲ごとにヴァリエーションのあるリズムが聞き取れ、
こうした音楽にありがちな単調さはまったくありません。

そしてこのCD、録音がすごく良いんです。
太鼓の低音がよく録れていて、腹にズンとくる響きと、
空を舞う歌と胡弓のレイヤーは臨場感たっぷりで、
目の前で演奏されているかのよう。
正月三が日、すっかりわが家のBGMとなって楽しませてもらいました。
心が整うカントゥルム、これは愛聴盤になりそうです。

Kantrum Dongman "NORTHERN KHMER SPIRIT MUSIC IN THAILAND" Animist ANIMIST010 (2022)
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