エシュの化身 ラバジャ [西アフリカ]
ナイジェリアの覆面男ラバジャが新作2枚を同時リリースしました。
前作“AFRICANO…THE MOTHER OF GROOVE”から4年ぶりです。
この人はアルバムのインターバルが長くって、ランディ・ニューマンといい勝負。
そういや、人を食った歌いぶりも、この二人けっこう似かよってたりして。
ラバジャの場合、酔っ払いがクダまいてるようなヴォーカルともいえますが。
ラバジャをアフロビートのアーティストと思っている向きもあるようですが、そりゃ誤解ですね。
フェラ・クティと共通してるのは、出発点がヴィクター・オライヤのハイライフということだけでしょう。
ラバジャはヨルバのドゥンドゥン・ミュージックをアフロ・ジャズ化したサウンドに、
ヒップ・ホップ、ラテン、ファンクなど雑多な要素を放り込んだ音楽をやるユニークな才人。
ユニークすぎて、訳わかんない!とリスナーを混乱させる未整理な音楽性が持ち味です。
前作では女性歌手をフィーチャリングして、大掛かりな弦楽アンサンブルをバックに、
大真面目なラヴ・バラードを歌わせるという、
どこまで本気なんだかという曲を聞かせたりしていました。
そういえばその曲“Never Far Away”のPVも傑作だったなあ。
アベオクタとおぼしき地方の家の裏庭にやってきた黒背広姿の交響楽団の面々を、
ヨルバの藍染衣装に着替えさせ、ラバジャが指揮するという抱腹絶倒もんのヴィデオでした。
とりとめない音楽性に面食らう人が多いようですけど、それこそがラバジャの真骨頂。
そのトリックスターぶりは、エシュの化身と呼びたいほどです。
エシュとは、かつて山口昌男さんが『アフリカの神話的世界』で解き明かした
ヨルバ人が信仰するトリックスター神。
天界と現世を自在に行き来し、悪行三昧で既成の秩序をかく乱し破壊する一方、
信仰や供犠に必要な知識や占いを人間に与えたりと、
破壊と再生をもたらす、ブッとんだ神様です。
今作のラバジャのブッとびトラックは、“PARADISE”に収録されたサルサ・ナンバーでしょうか。
なんと現在のニューヨークのサルサ界で最高のトロンボーン奏者ジミー・ボッシュと共演しています。
また“SHARP-SHARP!”には、前作に続いてベニンのガンベ・ブラス・バンドと共演した曲も収録。
クラブ・ジャズぽいメロウ・チューンもあったりと、かなり洗練されたサウンドで、
あまたあるアフロビートのコピー・バンドが、ロー・ファイなサウンドを狙うのとは対極といえます。
ラバジャがアフロビート継承者でないことは、こんなところにもよく現れていますね。
あいかわらずのアイディアてんこもりに、アルバムの統一感などおかまいなし。
リスナーをおいてきぼりにして、痛快なポップぶりを発揮しています。
スクエアなアフリカ音楽ファンには不向きの、
ひねくれ者にはたまらない魅力のアーティストですね。
Lágbájá! "PARADISE" Motherlan’ Music MM0409A (2009)
Lágbájá! "SHARP-SHARP!" Motherlan’ Music MM0409B (2009)
2009-12-17 06:15
コメント(1)
いいなぁ、これ聴いてみたいっす !
by アフマリリス (2009-12-17 11:26)