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デビュー当初のレディスミス・ブラック・マンバーゾ [南部アフリカ]

Amabutho.JPGImbongi.jpgUmama Lo!.jpgIsitimela.jpgAmaqhawe.jpgPhansi Emgodini.JPG

拙著『ポップ・アフリカ700』には、
レディスミス・ブラック・マンバーゾのアルバムを取り上げませんでした。
世界的に有名な南アのア・カペラ・コーラス・グループをなぜ、とお思いの方も多いでしょうが、
世界デビュー以降のレディスミスのシンプルなスタイルのコーラスは、
伝統的な南ア合唱の良さを伝えているとは言いがたく、
外国人リスナーを意識したプロデュースにも抵抗をおぼえるなど、
これはと思えるようなアルバムが見つからなかったからです。

とはいえ、彼らも初期の頃は、もっと良かったはずだという確信だけはありました。
それは、『ポップ・アフリカ700』にも選んだンブーベのコンピレーション
“MBUBE ROOTS : ZULU CHORAL MUSICFROM SOUTH AFRICA, 1930s-1960s”の
ラストに収録された“Umama Lo”を聴いていたからです。
この曲はレディスミスがレコード・デビュー前の67年にラジオ用に録音したもので、
のちの彼らとは別グループと思えるほど躍動的なンブーベを聞かせてくれます。

最近になって、彼らの初期のアルバムが南アのガロからまとめてCD化され、
ようやく初期のレディスミスの良さに開眼することができました。
特にすばらしいのが、南ア国内で2万5千枚を越すセールスをあげ、
南ア黒人アーティスト初のゴールド・ディスクに輝いたという73年のデビュー作“AMABUTHO”と、
同じく73年に続いてリリースされた2作目の“IMBONGI”です。
この2作は、ズールー人独特の濁りのある声を交え、
音域の異なる声を重層的にハーモナイズしたコクのあるコーラス・ワークが堪能でき、
野性味溢れる傑作となっています。

74年の4作目“UMAMA LO!”や5作目“ISITIMELA”あたりものびのびと歌っていて、
ヨーデルまで飛び出すユーモラスな曲など、南アらしい明るさが嬉しいですね。
しかしこうした躍動感溢れるンブーベを歌っていたのは、残念ながらデビュー当初だけで、
のちにイシカタミヤと呼ばれるソフトなコーラスへと彼らはスタイルを変えていきます。
彼らはこの洗練されたコーラスで成功するわけですが、
南ア合唱の味わいは乏しくなってしまいました。
結局彼らが魅力的だったのは、リーダーのジョセフ・シャバララが
75年にキリスト教へ改宗する前までだったんじゃないですかね。

76年の7作目“AMAQHAWE”になると、野性味が薄れはじめ、
かつて中村とうようさんが『アフリカの音が聞こえてくる』で紹介された、
炭鉱労働者に扮したジャケットの81年の18作目“PHANSI EMGODINI”では、
コーラスのエッジはすっかり甘くなり、平板にしか聞こえません。

このようにシンプルで教会音楽の影響も色濃いコーラスがかえって西洋人にはわかりやすく、
ポール・サイモンが惹き付けられたように、国際的にも受け入れやすかったんでしょう。
でもンブーベなどの南ア・コーラスの迫力や味わいを知る者には、
こんなもんじゃとても満足するわけにはいきませんでした。
デビュー当初のレディスミスの初期作こそに、南ア合唱の本来の良さがあります。

Ladysmith Black Mambazo "AMABUTHO" Gallo CDBL1015 (1973)
Ladysmith Black Mambazo "IMBONGI" Gallo CDBL1017 (1973)
Ladysmith Black Mambazo "UMAMA LO!" Gallo CDBL1020 (1974)
Ladysmith Black Mambazo "ISITIMELA" Gallo CDBL1022 (1974)
Ladysmith Black Mambazo "AMAQHAWE" Gallo CDBL1032 (1976)
Ladysmith Black Mambazo "PHANSI EMGODINI" Gallo CDBL1024 (1981)
コメント(8) 

コメント 8

043

こんにちは!
先日はカルトーラのDVDに関する情報ありがとうございました。

これはすごいですねー。
僕も多くの人達と同じように、ポール・サイモン以降のレディスミスしか知らないので。

最近、今年のワールドカップ絡みで南アフリカの音楽を選曲する機会があったんですが、古い音源はなかなか手に入りづらくて。。
これはぜひ手に入れたいです。

紹介していただいてありがとうございます。

by 043 (2010-01-16 22:13) 

bunboni

南アのガロからは、このレディスミスのほか、アバファーナ・バセクデーニ、アマスワージ・エムヴェーロやマッゴナ・ツォホレ・バンドなどなど、70~80年代のンバクァンガの名作が結構リイシューされているのですが、日本未入荷なのが残念です。

輸入盤店のバイヤーさんが興味をもってくれればと、「レコード・コレクターズ」誌に紹介しているつもりなんですが…。
by bunboni (2010-01-16 22:58) 

043

そうなんですか。。でもそういうものを入手されてるbunboniさんもすごいですね。

僕の父がサッカーの記者をしてまして、ワールドカップの取材に行くので、おみやげに買ってきてもらおうかな。
むこうでもこういう伝統的な音楽のCDはなかなか店舗に置いてないみたいですが。。
by 043 (2010-01-17 13:17) 

bunboni

アフリカン・ポップスのマーケットがもっと大きければ、バイヤーさんたちも競って買い付けるはずなんですけど…。これが今の現実なんでしょう…、と諦めてしまっては、ますます知られざる良盤が積み上がるばかりなので、めげずに日本未入荷CDを紹介し続けようと思っています。微力ではありますが。

あ、ところで、レディスミスほどのビッグ・ネームは、現地なら簡単に入手できるはずです。レーベルも大手のガロですから。
ちなみに、ガロの旧作復刻CDは廉価盤なので、クワイトや一般のポップスの半分くらいの値段で売っているはずです。
by bunboni (2010-01-17 15:51) 

043

それはよかった!

貴重な情報ありがとうございます。
by 043 (2010-01-19 10:12) 

ERI

こんばんわ!いつも楽しく拝見しております。

南アフリカの古いンバクァンガが聴きたいのですが捜しているのですが、全くもって手に入りません。bunboniさんは、どちらから入手されているのですか?
by ERI (2010-01-30 03:36) 

bunboni

いらっしゃいませ。すごい真夜中にご覧いただいているんですね。

そうですねぇ、レコード屋さんにもいっこうに入ってこないようなので、
お教えしちゃいましょうか…。
南アにはネット・ショップがかなりの数があるので、少し調べていただくと、すぐわかるとは思いますが、ぼくが長年利用しているのは、One World です。one world, za でググればすぐわかると思います。
ただし、到着まで1ヶ月ほどかかることと、紙袋にただCDを入れるだけの簡易包装しかしてくれません(緩衝材なし)から、到着時は100%CDケースにヒビが入っている(ばりばりに割れてることもあります)ことは覚悟しておいてください。
by bunboni (2010-01-30 09:53) 

ERI

おお~!貴重な情報ありがとうございます!早速注文してみますね♪
(またまた真夜中で申し訳ないです。)
by ERI (2010-02-01 01:59) 

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