SSブログ

クレオールの官能 [カリブ海]

Punch En Musique.JPG

ピアノ・トリオで聴くビギン・アルバムで一番好きなのが、
マリオ・カノンジュ、アレックス・ベルナール、ジャン・フィリップ・ファンファンによる99年作。
日本盤も出たアラン・ジャン=マリーの『ビギン・リフレクションズ』を気に入った人なら、
ぜったい聴いておかなきゃのビギン名作です。

昨年来日したマリオ・カノンジュは、日仏学院のライヴでも、
アレクサンドル・ステリオのビギン古典曲をソロ・ピアノでさらりとプレイしてくれましたが、
アルバムまるごと1枚ビギンに徹したものはマリオのソロ名義のアルバムにはなく、
その意味でも貴重なアルバムです。

レパートリーは、アレクサンドル・ステリオ、ルル・ボワスラヴィル、バレル・コペなどの
ビギン古典曲が並んでおり、アラン・ジャン・マリーのアルバムが、
50年代のジャズ・ビギン色の強いワバップを中心としていたのに比べ、
より古い時代のビギンに回帰しようとしたものと思われます。
なかでもストライド・ピアノのスタイルで弾いたアレクサンドル・ステリオの曲は、
古き懐かしい響きを演出していて、あの名作映画『マルチニックの少年』の主題曲を連想させます。
このアルバムの続編も08年に出たんですけど、自作曲中心のレパートリーとなり、
ジャケットもぱっとしないので、ぼくは見送ってしまいました。どなたか聴いた方、いらっしゃいます?

それにしても19世紀末のクレオール音楽って、どうしてこんなに官能的なんでしょうか。
ビギンばかりでなく、キューバのダンソーンやブラジルのショーロも同じ香りがします。
ヨーロッパの植民者たちが持ち込んだポルカやマズルカを奴隷黒人に演奏させ、
黒人たちは自分たちの娯楽として好みのリズムを混ぜ合わせて誕生したクレオール音楽の、
抜き差しがたい歴史の罪深さが、その官能性を引き寄せるのでしょうか。

ダンス・パーティに集まる男女の一夜の恋のために演奏されるクレオール音楽が、
どこか夢か幻のようにさえ思える、とんでもなくエレガントなメロディを伴うのは、
そんなところに秘密がありそうです。

Mario Canonge, Alex Bernard, Jean Philippe Fanfant "PUNCH EN MUSIQUE" Kann’ Production KANN’150965/08966-2 (1999)
コメント(2) 

コメント 2

ペイ爺

〉ジャケットもぱっとしないので、
確かに「何コレ?」って感じのジャケット。
この99年録音の方が、断然Good ですね。

「より古い時代のビギンに回帰しようとしたもの」とのことですけれど、昨年bunboniさんの記事で"LIVE - RHIZOME "を聴いて、超絶的な技巧に裏打ちされた、その疾走感、グルーヴ感に打ちのめされた体験を再びしてみたい欲求にも、正直、駆られますね(笑)

〉古き懐かしい響き
NorgranやVerveのレコード・ジャケットなどを数多く手がけたDavid Stone Martinを彷彿とさせる魅惑的なジャケットですね♪

by ペイ爺 (2010-02-22 18:26) 

bunboni

あ、確かにデイヴィド・マーティンの雰囲気、ありますね。とゆーか、完全に意識してますね。
その昔ジャケットがステキな“CREOLE SONGS”というSPアルバムを見つけて、
SPを聞く装置もないのに衝動買いしたら、
デイヴィド・マーティンのジャケットだったなんてことがあります。
いまだにそのSPアルバム、中身を聴けていないんですけど(泣)。
by bunboni (2010-02-22 21:32) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。