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キング・オヴ・カセーコ リーベ・フーゴー [南アメリカ]

Iko.JPG
南米のスリナムに、カセーコというごきげんな
ダンス・ミュージックがあるのをご存知でしょうか。
フランス領ギアナからスリナムに伝わった
クレオール・リズムのカセーコは、
ビギ・ポク(ビッグ・ドラムの意)と呼ばれる
ディキシーランド・ジャズの影響を受けた
スリナムのブラス・バンド音楽に、
カリプソなどのラテン音楽がミックスして
スリナムでポピュラー化した音楽です。

おととし08年4月にフーゴーを称えるコンサートがアムステルダムで開かれ、そのライヴとコンサート・プロジェクトのメイキング・ヴィデオを収めた2枚組DVDがリリースされました。

DVDのタイトルともなっている「イコ」は、リーベ・フーゴーの愛称です。
(「アイコ」ではありません)
フーゴーがオランダ、ベルギー、ラテン・アメリカ諸国をツアーして
人気の絶頂を極めていた75年は、
スリナム独立を目前に控え、スリナム国民にとって熱狂の時代でもありました。
スリナム国民がそんな熱にうかれていた独立10日前、
フーゴーは持病だった心臓疾患のため、オランダで急死してしまいます。
フーゴーが故国スリナムに帰還し埋葬されたのは、独立わずか2日前のことでした。
そのシンボリックな出来事は、スリナムの多くの人にとって忘れがたい記憶として刻まれ、
カセーコがスリナムのナショナル・ミュージックとして発展するとともに、
フーゴーはスリナムのポップ・アイコンとして、人々にずっと愛され続けることとなりました。

コンサートは男女二人の司会が進行役を務め、
交響楽団の弦オーケストラも加わったゴージャスな伴奏陣に、
さまざまなゲスト歌手が歌うという、歌番組的な内容となっています。
そして、コンサート以上に見ものなのが、このコンサートのメイキング・ヴィデオです。
リーベ・フーゴーの思い出を語る関係者の証言や、フーゴーの往時の活躍ぶりを伝えるとともに、
スリナムのヴードゥーにあたるマルーン系の宗教音楽ウィンティまで取材を広げ、
カセーコのルーツに迫った中身の濃いドキュメンタリーとなっています。
DVDを観ていて気付いたのですが、フーゴーという発音は
スリナムのクレオール言語のものらしく、
オランダ人はほとんどヒューゴと発音していますね。

ところで、それほどの伝説的なシンガーでありながら、フーゴーが残したアルバムはたったの2枚、
74年の“KING OF KASEKO”と、75年の“WANG PIEPEL, WANG NATION”のみです。
いまではこの2枚をカップリングした2イン1CDで、全曲を聴くことができます。
ぼくがカセーコを知ったのもこのCDがきっかけで、
マイティ・スパロウをホウフツとさせる陽性の歌と、
ジャンプアップさながらのホーン・セクションとともにグルーヴするサウンドに、すぐ虜となりました。

Lieve Hugo.JPGこのCDを聴くたび、もし今もフーゴーが生きていたら、どんなにすばらしいレコードを数多く残したかと思わずにはおれません。このCDは何度も再発され、90年にオランダで最初にCD化された後、98年にも再発されました。
最近になって2枚組で復活したと聞き、おやと思って買ってみたら、74年録音の15分に及ぶ“Langa Bere”1曲をボーナスCDに追加した再々発盤でした。
この曲はシングルで出ていた曲なんでしょうか? ひょっとして未発表曲???

それにしても70年代当時、これだけ成熟したサウンドがスリナムにあったのだから、
リーベ・フーゴー以外にも大勢の歌手がいて、
レコードも活発にリリースされていて当然だと思うんですが、
いまだに70年代のカセーコのアルバムは、この2枚しか知りません。
いくらリーベ・フーゴーが圧倒的人気だったからといっても、これは不思議です。
当時のカセーコのミュージック・シーンって、どんなものだったんでしょうか。
この辺の事情に詳しい方、どなたかいらっしゃいませんか?

[DVD] "IKO - KING OF KASEKO" IKO Foundation 501262 (2009)
[CD] Lieve Hugo "THE KING OF SURINAM KASEKO" EMI 0946 3768192 3 (1974/1975)
コメント(2) 

コメント 2

ペイ爺

〉陽性の歌と、ジャンプアップさながらのホーン・セクションとともにグルーヴするサウンド。
このbunboni さんのご紹介と、何となく安易な作りなんだけれど、味わいのあるジャケット(タイトルの文字のデザインが60年代後半のBNを彷彿とさせますね)に魅せられて、この"THE KING OF SURINAM KASEKO"、ネットで購入しました。
本日、米国からエアーで手元に来たのですけれど、期待通りの素晴らしいサウンドですね。
毎年、皮膚が焼け、茹だる様な暑い暑い夏の夜に聴く定番の一つにMangoの“Sound d'Afrique Vol1&2”があるのですけれど、似た印象を持ちました。
真夏の定番がまた一枚、確実に増えました。

by ペイ爺 (2010-04-13 10:52) 

bunboni

ヴァン・ダイク・パークスがプロデュースしたマイティ・スパロウの“HOT AND SWEET” (74)と
兄弟作みたいな感じで、ぼくはずっと愛聴してきました。
もしスパロウの“HOT AND SWEET” をお持ちでなかったら、一緒にオススメします。
by bunboni (2010-04-13 12:32) 

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