SSブログ

プレ・ボサ・ノーヴァの時代を駆け抜けて ドローレス・ドゥラン [ブラジル]

Dolores Duran Box.JPG

ボックスぎらいのぼくがソッコー買うなんて、アルセニオ・ロドリゲス以来の珍事でしょうか。
なんたって、ぼくの大・大・大好きなドローレス・ドゥランのボックスですからね~。
50年代に短い歌手人生を駆け抜け、ボサ・ノーヴァ前夜の59年、
まさしくこれからという時に早逝してしまったドローレス。
コンプリートで聴く価値のある数少ないアーティストの一人、
残された録音すべて聴きたいくらいですよ。

ドローレス・ドゥランといえばつい思い浮かべてしまうのが、58年のジョビンとヴィニシウスによる作品
“CANÇÃO DO AMOR DEMAIS”を歌うはずだったということ。
そう、エリゼッチ・カルドーゾが歌った、あの有名な『ボサ・ノーヴァ第0号アルバム』ですよ。
あのアルバムは、ドローレスの都合がつかずに、エリゼッチ・カルドーゾにお鉢が回ったんでした。

惜っしいよなあ~、ドローレスが歌ったほうが、ぜったい適役だったはず。
古いサンバ・カンソーンの感覚でしか歌えなかったエリゼッチは、
ボサ・ノーヴァの新感覚をつかめませんでしたけど、
ドローレスが“Chega De Saudade”を歌っていたら、
その後のボサ・ノーヴァの歴史を塗り変えたかもしれない。
だって、当時すでにドローレスは、ジョビンと一緒に曲を作ってたんですからね。
ジェラルド・ペレイラのサンバを歌ってたくらいだから、ドローレスはボッサを確実に持っていました。
だからいつまで経っても、「惜っしいよなあ~」とぐちぐちつぶやき続けてる私であります。

ボックス1枚目の55年の初LP“DOLORES VIAJA”から、
抒情が蕩け出すようなドローレスのあたたかな歌い口に、身も心もトロトロになります。
なかでも、マリア・クレウザが歌ったサンバ・カンソーンの“Canção Da Volta”が白眉。
ぼくがドローレスを知ったのも、70年代にマリア・クレウザを聴いたのがきっかけでしたけど、
やっぱりドローレスの歌は最高です。(マリア・クレウザのヴァージョンも好きなんですけどね)
魔性の女マイーザも大好きだけど、清純なドローレスの歌は、マイーザとまさに好対照。
ファドでいったら、アマリア・ロドリゲスとマリア・テレーザ・デ・ノローニャみたいな二人です。

そしてこのCDにはボーナス・トラックに、ドローレスのデビューSPの2曲が収録されています。
なんとこの2曲は、バツカーダも華やかにフィーチャーされた、カーニバルのサンバ。
こんなハツラツとした開放的な歌いっぷりのドローレスが聴けるのも、貴重ですねえ。
51年のデビューSPに続く、翌52年の2枚目のSPの1曲も収録されています。
こちらはビリー・ブランコ作のしっとりとしたサンバ・カンソーンで、少しノイズが目立つのが残念です。
SP片面しか収録されなかったのは、もう1面はもっと状態が悪かったのかもしれません。

2枚目“CANTA PARA VOCÊ DANÇAR”(57)と
3枚目“CANTA PARA VOCÊ DANÇAR NO.2”(58)は、
かつて2イン1でCD化されていたもの。
バイオーンに始まり、サンバ・カンソーンあり、サンバあり、ボレーロあり、外国曲ありと、
ナイトクラブで活躍した歌謡歌手らしいドローレスの柔軟な才能が、十二分に発揮されたアルバム。

Dolores Duran__CLP3039.JPG

4枚目の60年というクレジットのある“ESTRADA A SAUDADE”は初めて見たジャケットですが、
56年の10インチ盤"DOLORES DURAN"に曲を追加して、
12インチ化したものじゃないかと思われます。
収録音源がほとんど57年以前の録音で、10インチ盤のジャケットの写真を流用していることからも、
たぶん間違いないでしょう。

5枚目の60年作の“ESSE NORTE É MINHA SORTE”はバイオーン集。
ドローレスの自作曲はなく、全曲バイオーン(1曲のみトアーダ)という異色作。
これまでのアルバムでもバイオーンを歌っていたとはいえ、全編バイオーンというのはこれが初。
今回のCD化まで、ジャケット含めこのアルバムの存在自体を知らなかったので、オドロキでした。

Dolores Duran__3559.jpg    Dolores Duran_CEP4568.jpg

6枚目の“A NOITE E DOLORES DURAN”は、
SPやシングルのみで発表された曲を編集したアルバム。
シングル盤をあしらったデザインで、
ぼくの持っているシングル盤も使われたのが、ちょっと嬉しかったりして。
ドローレスの代表曲の“A NOITE DO MEU BEM”に始まり、
サンバ・カンソーンやバイオーンはじめ、バンジョー入りのフォックス=トロットや
アメリカのスタンダード“My Funny Valentine”などが収録され、
ドローレスの魅力が詰まった一枚だとぼくは思います。

7・8枚目の“O NEGÓCIO É AMAR”は、
ドローレス作品をカヴァーした多くの歌手たちの音源を収録したもの。
ネルソン・ゴンサルヴィス、シルヴィア・テリス、エリゼッチ・カルドーゾ、イサウラ・ガルシア、
ルシオ・アルヴィス、ディック・ファルネイ、ドリス・モンテイロ、カルロス・アウグストなどなど。
選曲には不満もあるけど、ぼくも初めて聴く曲が多く、楽しめました。

ボックスのケースには「コンプリート」の言葉も踊っていますが、これは誇大広告。
未収録のSP音源はまだまだあるので、全録音とはいえません。
とはいっても、ドローレス・ドゥランの「ほぼ」全録音を収めたこのボックス、
ドローレスを知らない人でも、歌好きなら、ぜったい買っておくべきです。破格のお値段だし。

[CDボックス] Dolores Duran "DOLORES DURAN" EMI 967878 2
[10インチ] Dolores Duran "DOLORES DURAN" Copacabana CLP3039 (1956)
[7インチ] Dolores Duran "DOLORES DURAN" Copacabana 3559
[7インチ] Dolores Duran "NO MICHEL DE SÃO PAULO" Copacabana CEP456
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。