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アフロペルアーナのコク デ・ロンペ・イ・ロハ [南アメリカ]

De Rompe Y Raja_EL RETORNO.jpg   De Rompe Y Raja_DIASPORA NEGRA.jpg

なんだかここのところ、ペルーがきてますねえ。
サヤリー・プロダクションによるクリオージョ音楽の珠玉のようなアルバムが続いたと思ったら、
今度はアフロペルー音楽の逸品を見つけました。

95年、アフロペルー音楽の普及を目的に北カリフォルニア在住のペルー人によって
結成されたグループ、デ・ロンペ・イ・ロハのアルバムで、
北カリフォルニアの彼らの自主レーベルから2タイトル、リリースされています。
01年に出たデビュー作“EL RETORNO” は、フェステーホ、ランドー、サマクエーカ、アバネーラを、
ギター、カホン、キハーダほか打楽器の伝統的な編成で歌ったオーセンティックな内容。
混声コーラスが実に味わい深く、これぞアフロペルー音楽の神髄といった仕上がりとなっています。

そして、このデビュー作の翌年から彼らは新たなプロジェクトに取りかかり、
昨年ついに2枚組の大作“DIASPORA NEGRA” を完成させました。
8年をかけただけのことはある、たいへんな力作です。
89年に渡米したリマ生まれの女性ダンサーで芸術監督のガブリエラ・シオーマと、
打楽器奏者で音楽監督のペドロ・ロサーレスがプロデュースしたこのアルバム、
デビュー作同様フェステーホ、ランドー、サマクエーカなどのレパートリーを繰り広げているんですが、
デビュー作のオーセンティックな路線を維持しつつ、現代的な感覚のサウンド・アイディアを施し、
デビュー作をはるかに凌ぐ充実した内容に仕上げています。

たとえば、トロンボーンを加えたディスク1の4曲目のサウンドは、
どこかウィリー・コローンを思わせますし、
ディスク1の6曲目でマリンバの音色を模したキーボードをフィーチャーしたのも、
なかなか洒落たアイディアです。
カホンほか打楽器のみの伴奏をバックに、男気たっぷりのヴォーカルが交叉する
ディスク1の7曲目のフェステーホに次いで、8曲目のランドーでは一転、
泣きのヴァイオリンをフィーチャーした泣き節となるところなど、なかなかニクイ演出となっています。
さらにディスク2の2曲目では、ジャズ・ギターとエレキ・ベースを加えて印象的なリフを作るなど、
さらりとコンテンポラリーなアレンジで聞かせるセンスもいいですね。
こうした多彩なアイディアが、
アフロペルー音楽の輪郭をくっきりと強調するのに成功しているわけです。

レコーディングは1曲を除いてカリフォルニアで行われていますが、
ミックス、マスタリングはペルーで行われています。
ペルー本国でも、これほど意欲的なアフロペルー音楽のアルバムはめったにお目にかかれず、
デ・ロンペ・イ・ロハの活動が貴重なばかりでなく、その成果は功労賞ものです。
こういう本格的なのを聴くと、味気ないスサーナ・バカなんか、とても聴けなくなりますよ。

アルバムを通じて痛感するのは、
アフロペルー音楽の<黒っぽさ>にもいろいろあるなあっていうこと。
リズムはアフロ系でも、歌はムラート感覚が強いものがあったりと、
その<黒っぽさ>には、さまざまなグラデーションがあることに気付きます。
一方、混淆音楽であるクリオージョ音楽でも、
黒人歌手が歌うヴァルスなどには、もろアフロ系といった強烈な黒っぽさを感じさせるものもあり、
こうした混淆の複雑さこそに、ペルー音楽独特の深いコクの秘密がありますね。

De Rompe Y Raja "EL RETORNO" no label no number (2001)
De Rompe Y Raja "DIASPORA NEGRA Ⅰ&Ⅱ" no label no number (2009)
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