娘がハタチを迎える日 ジェイムズ・テイラー [北アメリカ]
今日は上の娘の誕生日。
あと1日早く生まれたら、ぼくと同じ誕生日だったのにねー、なんですけど、
毎年恒例の、クリスマスとぼくと長女の誕生日のトリプルお祝いを、家族でささやかに行います。
今年は長女がハタチになる記念の年でもあり、
もう20年かぁと、お父さんは遠い目になってしまうのでした。
自分が子供だったころ、
なんで親って、すっごい昔の話を、まるで昨日のことのように話すんだろと思ってましたが、
自分がその歳になると、親の気持ちがよくわかりますね。
だって子供と大人じゃ、時間の流れ方や密度がぜんぜん違いますもん。
子供にとっての二十年は全人生でも、
親にとっての二十年なんて、ついこの前の、わずかな期間にすぎません。
娘の幼い頃の記憶のディテールがするすると出てくるのは、
子育ての濃密な時間を過ごした、親の特権なのかもしれません。
子供が育てやすく、奥さん任せで済んだのなら、
親父にさしたる思い出も残らなかったかもしれませんが、
2歳から始まった熱性けいれんが小学校高学年まで続いたり、
ほかにもあれやこれやと心配事が多かった娘だけに、
夫婦でいろいろな山谷を乗り越えてきたひとつひとつの記憶が、心に深く刻まれています。
元気に成長した今となっては、そんな記憶もすでに思い出へと昇華していて、
未熟な親なりに、そのときどき必死になって流した汗の痕が愛おしくみえます。
親を心配させるのが子供の役目、なんて格言もあるくらいだから、
娘は親孝行をしてくれたともいえるわけですかね。
そうでなくても、ちっちゃな頃からずっとお父さんっこだったので、
一緒にいろんなところへでかけたり、楽しい思い出もいっぱい残してくれ、
ずいぶん恵まれたお父さんだったと思います。
娘にありがとうね、と感謝しなくちゃいけませんね。
独身だったころ、というかまだ高校生の時でしたけど、
将来結婚して子供が生まれ、家族団欒というイメージにもっとも近かったのが、
ジェイムズ・テイラーの“GORILLA” でした。
カーリー・サイモンとの円満な夫婦生活や、
子供との愛情に満ちた日常が伝わってくる歌の数々には、
ぽかぽかと陽だまりのような温かさに溢れていて、
将来自分もこんな家庭を持てたらと、ぼんやりとした憧憬を持ったものでした。
その後ジェイムズはカーリーと離婚し、
ぼくも“GORILLA” への憧憬などすっかり忘れてしまいましたが、
02年に出た“OCTOBER ROAD” で何十年かぶりにジェイムズの歌を聴き、
人生のさまざまな季節を経て、老いを予感させる歌などに、胸をつかれる思いがしました。
ジェイムズも年を取ったんだなあと感慨にふけつつ、
ふと昔の“GORILLA” を聴いてみたくなり、CDをかけたところ、
若い父親のナイーヴさが痛いくらい伝わってきたのは、意外でした。
父親になり立てのナイーヴな感傷は、娘が生まれた当時の自分を見るようで、
少し恥ずかしいような気分にもなってしまいました。
このアルバムに憧憬を抱いた高校生当時には、わかるはずもない感慨ですが、
歳をとらないとわからないことがあるのも、また人生ですね。
James Taylor "GORILLA" Warner Bros. 2866-2 (1975)
2010-12-26 00:13
コメント(5)
二度目の書き込みになります。
娘さんの二十歳の誕生日、オメデトウございます。
父親としての愛情溢れる一文に心温まる思いです。
私にも来年二十歳になる娘があるものですから、他人事とは思えない気持ちです。
>歳をとらないとわからないことがあるのも、また人生ですね。
まったく同感です。
人生最高!!!
ところでKingSunnyAde来日映像でのbunboni さん登場シーンはシンクロ・システム演奏時ではないでしょうか(笑)
by 酔人婆爺 (2010-12-26 09:22)
ありがとうございます。酔人婆爺さんにとっても、来年が楽しみですね。
サニー・アデのNHK映像のぼくのチラ映りシーン、ビンゴ!です。
by bunboni (2010-12-26 11:08)
さっき、たまたまマーヴィン・ゲイの<How Sweet It Is>をインターネットで聞いてんですが、その時に、「おお、ジェイムス・テイラーのも大ヒットしたよなあ」と思ったんですよ。
そうそう、この<ゴリラ>のアルバムでしたね、この曲が入っていたの。
僕の上の娘は、18歳で、ただいま家に帰省してるのですが、まだまだ、子供っぽい所もありまして…と言いつつ、これはショウガナイのかな、とも。
まあ、まだ僕の頭と体が健康な内に、子供とのひと時を楽しもうかと。
by ogitetsu (2010-12-27 12:13)
実はうちの地元の公民館の呼びかけで10年後の自分に手紙を出そうという企画があります。
うちの上の娘はまだ10歳ですが10年後はちょうど20歳。今年中に仕上げようと思い、文面を考えたところのこの文面でしたので、思わず自分の(想像する)10年後を重ねてしまいました。
これまでの10年もあっという間でしたが、この次の10年はどうなるのか・・・不安と期待がないまぜです。こんな温かい気持ちで娘の20歳を迎えれれば幸せですね。
by サユール (2010-12-27 17:18)
ogitetsuさま
ぼくはこの“GORILLA” で“How Sweet It Is” を聴いたものだから、
マーヴィンのヴァージョンを聴いた時は、印象がまるっきり違ってびっくりしました。
娘が小さかった頃は、とにかく早く大きくなってくれと願ったものですけど、
あとになってみれば、子供に関われる時間なんて、ごくわずかのことですよね。
「イクメン」なんて言葉は、われわれの頃にはありませんでしたけど、
否が応にも向き合わざるを得なかった育児のおかげで、
未熟な親のこちらの方が「オトナ」になれたという実感があります。
サユールさま
娘が小学4年の時、小学校で「1/2成人式」という催しが行われました。
その時に娘が作った「お父さんへ お母さんへ」という招待状をこの前見つけて、
娘が書いた文面に、思わずジワッときたものです。
サユールさんの10年後も、きっと同じ温かい気持ちで迎えられますよ。
これまでの10年があっという間だったのなら、ぜったい大丈夫ですよ。
by bunboni (2010-12-27 20:22)