ウォロフの伝統ダンスをブレイクビーツに パペ・チョペット、サラム・ジャロ [西アフリカ]
これって、新しいスタイルのンバラなんじゃないでしょうか。
パペ・チョペットの11年作“LEUMBEUL” は、
ンバラにレゲエのDJを持ち込んだようなトースティングするスタイルを聞かせ、
こういうやり方もあったか!と不意打ちを食らったような思いがしました。
ンバラのビートにのって、アジテイトするように激しく言葉を投げつけるスタイルは、
ルンバ・ロックのアニマシオンにも似ていて、すごくカッコイイですね。
一部でメロディを歌うところもあるので、やっぱラップというよりトースティングに似ているかな。
ラスト・ナンバーでは、1曲まるまる歌っていますしね。
ところがサラム・ジャロの新作になると、歌はフィーチャリングしたシンガーにまかせて、
自分はトースティング? リルティング? ラップ?に徹しています。
ただ、これをラップと呼ぶには、ちょっと違和感があるかな。
ほとんどが短い言葉をかけ声のようにかけるだけで、ラップのようなフロウは使われないし、
バック・トラックだって、生のンバラ演奏ですからね。
じっさいセネガルの芸能情報の記事を読んでも、
パペ・チョペットとサラム・ジャロのいずれもンバラ・シンガーと表現されていて、
ラッパーとは書いていません。
でも、シンガーと呼びのもなんだか変で、MCというのがちょうどいいような気もしますが。
サラム・ジャロについては、ンバラの演奏をバックにしているというより、
サバール・ダンスのビートにのせて、MCをしているように聞こえます。
サバール・ダンスはブレイクだらけのビートが特徴で、
フレーズの随所にブレイクを挟んだビートは、生のブレイクビーツそのもの。
セネガルではこのブレイク(キメ)のことを、ダーネルと呼ぶんですが、
ダーネルにぴたりと合わせるように、サラムはかけ声をかけるんですね。
また、ダーネルで口太鼓のようなオノマトペを多用するのは、
伝統的なサバール・ダンスの流儀でもあり、ウォロフの伝統そのものともいえます。
サラム・ジャロは、シュペール・ジャモノのパーカッショニスト兼ダンサーとして活躍する一方、
伝統的な舞踏団にも所属し、サバール・ダンスを得意としていたのだそう。
なるほどそういう経歴であれば、ドゥドゥ・ンジャイェ・ローズに代表されるサバールの演奏と、
かけ声をミックスしたスタイルが生まれるのも当然というか、自然な流れだったのでしょうね。
プロダクションもエレクトリックなンバラばかりでなく、
ハラムや笛などの伝統楽器を使ったり、グリオのシンガーをフィーチャーするなど、
ンバラのルーツであるウォロフ色を強く反映したものとなっています。
ンバラを伝統的なリズムに先祖帰りさせ、ブレイクビーツのように活用した新しいスタイルが、
目の覚めるような新鮮さを生み出したのでした。
Pape Thiopet "LEUMBEUL" Prince Arts no number (2011)
Salam Diallo "GUISSA MBAKH" Domou Joloff no number (2012)
2012-06-18 00:00
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