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父から息子たちへ ザニ・ジャバテ [西アフリカ]

Zani Diabate   TIENTALAW.JPG

昨年1月、惜しくも亡くなってしまったマリの名ギタリスト、ザニ・ジャバテ。
グリオ名門一族のジャバテ家に生まれ、幼くして入団した国立舞踏団で
パーカッショニスト、ダンサーとして活躍し、その後習得したギターでギタリストへの道を歩んだ人です。

舞踏団で同僚だった歌手のダウダ“フラニ”サンガレとともに、69年ガヌア・バンドを結成、
のちにマリで3番目の国立バンドとなるオルケストル・ナシオナル・Cの称号を得ますが、
公務員となるよりも自由な私設バンドを望み、
ジャタ・バンド(のちのシュペール・ジャタ・バンド)を74年に結成して活動を続けました。

80年代にはディスコラマ、モンジャル、オモギディ、ミラディといった
ローカル・レーベルから8作のレコードをリリースしています。
国際的な知名度こそありませんでしたけれど、折しもワールド・ミュージック・ブームにのって、
88年にイギリスのマンゴが、85年のミラディ盤を世界向けにお化粧直しして再発し、
欧米などにもツアーへ出かけるようになりました。

そのマンゴ盤リリースの余波で日本にも89年にやって来て、
最高にごきげんなステージを繰り広げてくれたのが忘れられません。
サリフ・ケイタの初来日のちょうどひと月前だったんですけど、
サリフ・ケイタのコンサートより、断然楽しかったもんなあ。

白人ギタリストの首根っこを捕まえてステージを引き回した、
高飛車で後味の悪かったサリフのステージとは真逆。
肩車の上にのってギターを弾いたり、ギターのアクロバットな曲芸など、
観客を徹底的に楽しませるエンタテインメント精神にあふれたステージでした。

その後、ザニはまた地元中心の活動に戻ってしまい、
二十年近く活動の様子が伝わってこなかったんですが、
アメリカのインディ・レーベル、カナガ・システム・クラッシュから
08年にザニ名義のアクースティック・アルバムが突然出て、
元気な様子をうかがい知ることができました。
だからなおのこと、突然の訃報はショックでしたが、
ラスト・レコーディングを残してくれたのは、まさしく天からの贈り物といえます。

驚いたのは、かつてシュペール・ジャタ・バンドでフロントを務めた二人の名歌手、
アル・ファネとダウダ“フラニ”サンガレの息子たちが参加していたことです。
アル・ファネは94年、ダウダ・サンガレは08年に亡くなってしまったのですが、
彼らの息子たち3人いずれも、父親譲りのカマレ・ンゴニの
見事なヴォーカルを聞かせてくれ、ジンときてしまいました。
アル・ファネとダウダ・サンガレのコンビは、
シュペール・ジャタ・バンドとは別にカマレ・ンゴニのアルバムを残していて、
下の2作はワスル音楽ファンの間でよく知られた名盤ですね。

Aliou Fane, Daouda Sangare, Djuru Diallo.JPG   Alou Fane's Fote Mocaba.JPG

さて、そんなカマレ・ンゴニばかりでなく、バンバラやボゾの泥臭いリズムに、
フラニやマリンケのメロディをミックスするという、
マリのざまざまな民族の伝統を織り上げたシュペール・ジャタ・バンドの持ち味は、
本作でも存分に生かされているばかりか、過去最高の仕上がりといえるんじゃないでしょうか。
ベーシック・トラックの打ち込みと生音によるアンサンブルのブレンド具合も絶妙なら、
バラフォンやンゴニの響きが生き生きと飛び跳ねる
円熟味を増したグルーヴは、80年代録音を凌いでいます。

今作のバンド名がLes Héritiers(相続人)と謳われたとおり、
アル・ファネの息子のムサ“ヴィユー”ファネに、ダウダ“フラニ”サンガレの二人の息子、
アル“バデン”サンガレとアル“シカソ”サンガレ、
そしてザニ・ジャバテの息子でギタリストのシナリー“パパ”ジャバテたちが、
シュペール・ジャタ・バンドのサウンドを今後も継承していってくれそうです。

[蛇足的余談]ライス盤解説に「享年65歳」とありますが、
それだと英文解説の「1947年生まれ」と符合しません。
英文解説に享年の記載はありませんが、亡くなった2011年1月5日までに
誕生日を迎えていれば「64歳」、もしくは「63歳」ということになります。
他にザニの生年を49年とする資料もあるので、正確な享年は不詳ですね。
アフリカ人にありがちな話でありますけれども。

Zani Diabaté & Les Héritiers "TIENTALAW" Stern’s Music STCD1113 (2012)
Aliou Fané, Daouda Sangaré, Djuru Diallo "KAMALE NGONI - KELEA" Indigo LBLC2517 (1987)
Alou Fané's Foté Mocoba "KAMALAN N'GONI - DOZON N'GONI" Dakar Sound DKS005 (1994)
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大久保といいます

08年にZANIとPapyusたちを自腹で招聘しました。
その年の初めにマリに滞在したおり、60歳を迎えたZaniさんが、マリ舞踊団の監督を定年?退職することになって、もともとギニアのアーティストを招聘するはずの書類をコピーして、強引に呼びました。
その年のCDは彼が持ち込んだ音源をコピーしたものと思われます。
手続きの折にZaniさんのパスポートを見ましたが、生年月日の欄が
1948(1947だったかも)年xx月xx日
となっていました。アフリカらしい(笑)。
by 大久保といいます (2013-02-12 22:30) 

bunboni

ザニ・ジャバテのコンサートは、本当に良かったですねー。
ザニの知名度のなさゆえ、音楽誌にすら、まともなレヴューが載りませんでしたけど、
マリ現地直送のポップをそのまんま味わえた最高のライヴでした。
by bunboni (2013-02-13 20:14) 

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