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ヘルシーな新世代サンバ アナ・コスタ [ブラジル]

Ana Costa  HOJE E O MELHOR LUGAR.JPG

前回マノ・デシオ・ダ・ヴィオラの記事で、70年代にルーツ・サンバと出会った時の
彼我の埋めようのない距離に畏敬の念を抱き、サンバにのめり込んだと書きましたけど、
サンバはそんな遠い存在のものばかりじゃ、もちろんありません。
日本人の自分との距離感をまったく感じさせない同世代感覚のサンバだってたくさんあって、
親しみやすい都会派のサンバなら、なんの遠慮もなく肩に手を回せる気安さがあります。

アナ・コスタはそんな友達感覚いっぱいのサンバの代表格でしょうか。
テレーザ・クリスチーナなどとともに、ラパの新世代のサンバ・シーンを牽引してきた人で、
伝統サンバの土臭さとも無縁なら、裏町街道をいくマランドロとは生まれも育ちも違う、
マンション暮らしをしてそうな都会っ子のサンバを聞かせてくれます。

かつてはやくざ者やゴロツキが闊歩した危ない街ラパも、いまや観光客が夜出歩けるほど
安全でクリーンになったそうですけど、この健康的でオーガニックなサンバの育ちの良さは、
そうした環境でなければ生まれなかったものでしょうね。

O Roda  COISAS DO AMOR.JPG   Ana Costa  MEU CARNAVAL.JPG

アナ・コスタにマンション暮らしの女の子というイメージが貼り付いているのは、
アナ・コスタがメンバーのオ・ローダというグループのジャケットが、
マンションでルーム・シェアしている3人の女の子といった感じだったからなんですけど、
そのアナ・コスタの06年のデビュー・アルバムはぼくの大好きなアルバムでした。
セルソ・フォンセカやマルチナーリアらとの共作曲に古いサンバのカヴァーも交えて、
MPBを通過してきた若い世代らしいフレッシュさを溢れさせた傑作です。

ところが09年に出たセカンド作はMPB寄りにプロデュースした作品で、
エレクトロをカクシ味に使ったり、サンバ・ソウルふうに仕上げるなど、通俗的なサウンド・プロデュースが、
新世代サンバのみずみずしさを損なっていて、がっかりしたものでした。
やっぱ一般ウケを狙うと、あーいう平凡なMPB路線になってしまうのかなあと思っていたんですが、
新作では原点回帰のクリーン・ヒットを放ってくれましたよ。

全15曲、バックは弦楽器と打楽器のみという、正攻法なまでのサンバ。
ギミックなしの直球勝負が、すがすがしいったらありません。
リズム・センスだけでモダンさとポップさを発揮できる、アナの資質が十二分に花開いています。
アナは3作目にして、自らの立ち位置に自信を深めたんじゃないでしょうか。
2作目のようなサウンド・プロデュースは必要ないと決別してくれたことに、快哉を叫びたいですね。

ジャケットの抜けるような青空にこぼれるような笑顔も胸をすく、アナの最高作です。

Ana Costa "HOJE É O MELHOR LUGAR" Zambo/Biscoito Fino BF178-2 (2012)
O Roda "COISAS DO AMOR" Zambo 1617081103 (2003)
Ana Costa "MEU CARNAVAL" Zambo ZD0002 (2006)
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