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パウリスタのヴェーリャ・グァルダ イデヴァル・アンセルモ、チオ・マリオ [ブラジル]

Ideval Anselmo  SAM017-02.JPG   Tio Mario   SAM019-02.JPG

これぞヴェーリャ・グァルダ、伝統サンバの味わいですよねえ。
「お爺サンバ」と言うけれど、若い奴らじゃ、こんな熟成したサンバは歌えません。
伝統サンバのエッセンスをぎゅっと濃縮した、コクの深いヴォーカルを味わえる、
二人のサンパウロのサンビスタのアルバムがリリースされました。

まず一人目は、イデヴァル・アンセルモ。
カミーザ・ヴェルジ・エ・ブランコ、ローザス・ジ・オウロ、ウニードス・ド・ペルーシェなど、
サンパウロのエスコーラ・ジ・サンバに数多くのサンバを書いてきた作曲家です。
イデヴァルのサンバはどれもメロディアスな曲ばかりで、
その優れたソングライターぶりは、このアルバムを聴けばイッパツで実感できますね。
なめらかなヴォーカルも実に魅力的で、70近い年齢による老いを微塵も感じさせません。
じっくりその声を聴き入ると、わずかばかり枯れているかなと感じるくらいで、
男っぷりのいい、なんとも味のあるサンバを聞かせてくれます。

もう一人のチオ・マリオは、カミーザ・ヴェルジ・エ・ブランコ育ちのサンビスタ。
カミーザ・ヴェルジを離れたあとは、北部の新しいエスコーラを育てた人だそうです。
チオの歌いぶりはまるで酔っ払ってるみたいで、その脱力ヴォーカルは抱腹絶倒もの。
曲によっては、寝起きみたいな声で、
ちゃんと起きてる?てな頼りなさなんですけれど、これがまた憎めない。
う~ん、こういう歌が味になっちゃうってところが、ヴェーリャ・グァルダならではですねえ。
サンバばかりでなく、アタバーキをバックに歌ったアフロっぽい曲を歌っているところも興味深く、
これほど濃いアフロ・ブラジリアン音楽をサンビスタの新録で聴けることに、感動してしまいます。

この2作は、『サンパウロのサンバの記憶』のタイトルどおり、
サンパウロのサンバを保存・普及に努める非営利団体コロンボロ・ジアー・ピラチニンガが制作した、
全12巻におよぶシリーズの一部。
こういうプロジェクトの文化的意義は言うに及ばずですけれども、そうした意義よりも、
音楽的にきわめてクオリティの高い作品に仕上がっているところが、
本シリーズの素晴らしいところです。
09年に最初の4タイトルがリリースされ、
残り8タイトルもすでにレコーディング・マスタリングを完了し、
順にリリースが予定されていましたが、結局3年も待たされてしまいました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-07-20

残念ながら、こういうホンモノの濃い味の伝統サンバは、大したセールスは期待できないもの。
地味なサンビスタやエスコーラのアルバムの制作・販売には、
きっと人知れぬ苦労があるんだろうなあ。
今回のリリースに3年かかったことからも、
順調に世へ送り出せない事情がいろいろとあるんでしょうね。
単なるリスナーにすぎない一サンバ・ファンからは、地球の裏側から応援の意をこめて、
こんな雑文でアルバム紹介することくらいしかできませんけれど、
シリーズの残り5タイトルが無事リリースされることを、心から願っています。

Ideval Anselmo "MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA" Sambatá/Tratore SAM017-02 (2012)
Tio Mário "MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA" Sambatá/Tratore SAM19-02 (2012)
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