ターボ・フォーク姐御 ナターシャ・マティッチ [東ヨーロッパ]
「姐さんについてきます!」
思わず声を上げそうになった、セルビアのナターシャ・マティッチの新作。
全編、男前。気風の良さが鮮やかです。
バルカン・ブラスぶりぶり、ツィンバロンとアコーディオンも大活躍する伴奏をバックに、
こぶしをぐりんぐりん回すナターシャの胸をすく歌いっぷりは、まっことカッコイイ。
ライカをロックぽくアレンジしたようなオープニング・ナンバーから、
勇壮なヴォーカルを炸裂させまくります。
バックのアレンジも見事で、バルカン・ブラスとヒップ・ホップが同居するプロダクションなど、
スリリングな展開を見せる一方、粋なバラードを挟み込んでみたりと、
聴き疲れしないアルバム構成の上手さに、プロデュースの妙を感じさせます。
セルビアにはクセニヤ・マンディッチというダイナマイト姐さんもいましたけれど、
こういったパンチの利いたバルカン歌謡って、セルビアの特長なのかなあ。
あまりこの地域の音楽を熱心に聴いているわけではないので、
よくわからないんですけれども。
セルビアでは、こういったバルカン歌謡をターボ・フォークと呼ぶのだとか。
セルビアの伝統音楽に、ロマ音楽、さらにギリシャのライカ、トルコのアラベスクなど
周辺国のポップ・ミュージックをミクスチャーしたダンス・ポップスというわけです。
90年代にベオグラード北部、ノヴィ・ベオグラード地区の違法ラジオ局が、
民俗音楽とダンス・ミュージックをミックスして放送していたのをきっかけに流行し、
やがて20世紀末の旧ユーゴスラヴィア諸国で一大ブームとなったそうです。
セルビアが国際的な経済制裁を受け、疲弊する市民生活のなかで、
享楽的で挑発的なターボ・フォークは、低俗と揶揄されながらも一大ジャンルへと発展。
いまやドラガナ・ミルコヴィッチやツェツァなどの大スターも生まれ、
扇情的なダンス・パフォーマンスで、ポピュラー・ミュージック・シーンの王道となったとのこと。
ブルガリアのチャルガやルーマニアのマネーレと似た傾向のポップ・ミュージックといえます。
こういう大当たりのアルバムに出くわすと、
ターボ・フォークなるバルカン歌謡のシンガーをもっと聴きたくなりますね。
Nataša Matić "MESEĆE" Gold Audio Video CD2293 (2012)
2013-01-10 00:00
コメント(2)
わたしもそのアルバムを聴きました。仰る通り、大当たりの作品ですよね。ほかのターボ・フォーク歌手たちとは一線を画した素晴らしい作品でした!
わたしの知る限り、近年のターボ・フォークは安直なダンス化の楽曲が増えたので、昔のやつに比べたら、つまらなくなったと思います。エスニックな音ではあるけれど、ロマ風の音なのはあまり耳にしなくなったし。
ターボ・フォークは、ほかには、Seka Aleksic「Balkan」、Lepa Brena & Slatki Greh、Indira Radic「Indira」、チャルガ/ポップ・フォークは、Galena「Az」、Gloria「Vlyubena V Zhivota」、マネーレは、Ionut Cercel「La Varsta Mea」が特に良かったですよ。
全て日本のiTunes Storeにあるので、興味がありましたら、聴いてみてください(^-^)/。
by 馨 (2013-04-19 23:07)
うわぉ、情報ありがとうございます。
ターボ・フォーク、実はぜんぜん聴いてなくて、
たまたま聴いたのが大当たりのビギナーズ・ラックでした。
さっそくサンプル聴いてみます! フィジカルもあるかな?
by bunboni (2013-04-19 23:38)