夢と空想の海へと誘う声 ジャッキー・オーツ [ブリテン諸島]
『ララバイズ』というタイトルにぴったりな愛らしい絵柄に、思わず笑みがこぼれますね。
ひざまずいて座る、両手を顔にあてたおさげ髪の少女は、何をしてるんでしょう。
かくれんぼの鬼をしているのかな。絵の少女をそっとなぞると、
パッケージのざらりとしたボール紙の感触が伝わってきて、心がほんのりとしてきます。
三つ折のパッケージを開くと、そこには素朴なタッチで描かれた田舎の風景が広がります。
子供がお絵かき教室で描いてきた絵を、プレゼントでもされたような錯覚に陥り、
思わず、ほおっとため息が出てしまいました。
もちろん印刷されたものなんですけれど、この手作り感を大切にしたアートワーク、
あぁ、やっぱりパッケージっていいですよね。ダウンロードではこういう喜びは味わえません。
聴く前からジャケットを見ただけで、これは傑作に違いないと確信しちゃいましたけど、
本作はいままで以上に素直なジャッキーの歌唱が発揮されていて、
子守唄のピュアな世界に吸い込まれていきます。
ひそやかな伴奏も過不足なく、気負い無く歌うジャッキーの歌にぴたりと寄り添います。
聴いていたら、なんでだか涙がこぼれてきて、困ってしまいました。
赤ちゃんを抱っこしながら無垢な笑顔を眺めている時、
ふと自然に涙が溢れてくるような不思議な感情の高ぶり。
娘たちが生まれたばかりの頃に味わったこんな感覚、もうずっと忘れていましたねえ。
子守唄の題材はさまざまで、英国ばかりでなく、
アイスランド、オーストラリア、ハンガリーからも採られています。
また、伝承曲以外にも、ジョン・レンボーンやポール・マッカートニーの曲に、
シェークスピアの『真夏の夜の夢』の中の「妖精の女王の歌」に伝承曲のメロディを付けた曲が
ジャッキーの柔らかな歌声にのせて、夢と空想の海へと誘います。
Jackie Oates "LULLABIES" ECC ECC009 (2012)
2013-04-02 00:00
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