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無人島レコード ダン・ヒックスとヒズ・ホット・リックス [北アメリカ]

20010215_Dan Hicks.JPG

うわぁ、あのレコード・ジャケットをそのままミニチュア化したのかぁ!
紙マッチを模した前開きのジャケットを上に開けると、
レコード・ポケットになっているメンバーの集合写真が、
縁に沿ってダイカット式に切り抜かれているんですよね。
手の込んだこの変形ジャケットを忠実に紙ジャケ化したとあっては、
ふだん洋楽日本盤を買わないぼくでも手が伸びます。

レコードの内袋もオリジナル盤を忠実に再現していて、あっぱれなんですが、
惜しむらくは、CDレーベルがオリジナルのアートワークをまったく無視していたこと。
レコードは通常のブルー・サム盤のレーベル・デザインではなく、A・B面別々に、
いかにもダン・ヒックスらしいウイットに富んだ、偽オリエント風な絵柄が使われていたんです。
CDは片面なので完全再現は無理にしても、どうせやるなら徹底してほしかったなあ。

いつだったか、「アナタにとっての無人島レコードは?」というアンケートの問いに、
とっさに思い浮かんだダン・ヒックスのこのレコードを書いたことがあったんだけど、
その後何度考え直しても、その答えは間違っていなかったと思っています。

このレコードとの出会いは、高校2年生の時。
当時出会った生涯級の愛聴盤に、ボビー・チャールズのベアズヴィル盤や
ダン・ペンの“NOBODY'S FOOL” がありましたけど、あちらは「棺桶レコード」。
無人島レコードは、俗っぽいのにどこか浮世離れしてるダン・ヒックスの方がお似合いです。
エキゾティックでムーディで、奇妙に捻じれていて、バカ騒ぎするかと思えば、
ほろりとさせる切なさがあって、お調子者のようにみえて、実はシャイなダン・ヒックスの音楽。

高校生の頃のぼくといえば、「教条的なロッカー」や「反体制のヒーロー」みたいな、
押し付けがましいロックがとにかく大の苦手でした(今もだけど)。
ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ジョン・レノン、み~んな受け付けなくってねえ。
そんなぼくがノヴェルティなダン・ヒックスに飛びついたのは、
教条的とは真逆の、ユーモアと辛辣な皮肉が入り混じった独特のセンスが
ゾクゾクするほど魅力的だったんですね。

「落ちこぼれロッカー」とまでは言わないけれど、男のだらしなさを通り越して、
人間の不確かさや愚かさ、無知で傲慢で弱い生き物であることを自覚した曲の数々。
ビートニクにも通じるダン・ヒックスは、ぼくにとって愛すべき兄貴的存在に映りました。
硬直的な正義を歌う「ラディカル・シック」([コピーライト]トム・ウルフ)の幼稚な社会性に比べたら、
虚実入り混じるいかがわしいダンの方が何倍も大人で、カッコよく見えたんですよ。

そんなこのレコードとの出会いから四半世紀。ダンとホット・リックスが01年に来日した時、
ライヴ終了後の楽屋でダンとご対面できたのは、感無量だったなあ。
記念に一緒に写真も撮ったんですが、ダンはぼくの肩を抱きながら、
視線はあらぬ方向を向いているマヌケなショットになっていて、
こんなところも実にダン・ヒックスらいというか、苦笑してしまったんでした。

[LP] Dan Hicks and His Hot Licks "STRIKING IT RICH!" Blue Thumb BTS36 (1972)
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