知られざるギリシャ北部山岳地帯のヴィンテージ録音 [東ヨーロッパ]
ひと目でロバート・クラムとわかる漫画に、吸い寄せられました。
ギリシャ北西部イピロス地方の音楽家たちが、第二次大戦前後に残したSP18曲の復刻集。
SPコレクターでプロデューサーのクリストファー・キングが編集したアルバムです。
クリストファー・キングの名は、
ザディコのアメデ・アルドワンのリイシュー作などで知られていますけれど、
こんな東欧の辺境の音楽まで射程に入れているとはオドロキです。
ギリシャ北西部イピロス地方って、いったい、そりゃどこだ?と思わず地図を広げましたけれど、
調べてみると、20世紀に二度にわたるバルカン戦争を経験し、
第一次大戦と第二次大戦でも戦闘の場となり、
ギリシャとアルバニアが激しく領有を争った地域だそう。
住民の多くは、羊や山羊の牧畜業を営むギリシャ人ですが、
アルーマニア(ヴラフ)人やアルバニア人もいて、複雑な社会を構成しているそうです。
トレモロで弾くリュートを伴奏に、クラリネットが奔放に吹きまくるオープニングからして強烈。
クラリネットは羊飼いの笛を代用したもので、大きな音の出るクラリネットの特性を生かし、
フロエラと呼ばれる笛の響きを、よりダイナミックに表現する奏法が編み出されたんだそうです。
ヴァイオリンと掛け合う曲でも、嘆き歌のようなフレージングが生々しいことこのうえありません。
ギリシャ北部に暮らすロマの家系のハルキアス一族が伝えてきたラメントや、
アルバニア人による男声ポリフォニー、リュート、ヴァイオリン、クラリネットのパートと
男声ポリフォニー・コーラスが交互に入れ替わるワークソングのような曲も聞けます。
4分の3拍子のダンス曲、4分の4拍子のシンコペーションの利いた歌曲、無拍の器楽曲など、
リズムのヴァリエーションも豊かですね。
録音はすべてアテネで行われていて、はるばる北部の山村から都会のアテネまで、
羊飼いやロマたちを連れてきてレコーディングするのは、たいへんだったろうなあ。
レンベーティカに溶け込んだロマの音楽や、クレズマーのルーツがかいま見られる音源集です。
V.A. "FIVE DAYS MARRIED AND OTHER LAMENTS ; SONG AND DANCE FROM NORTHERN GREECE, 1928-1958" Angry Mom AMA03
2013-11-14 00:00
コメント(2)
同じではないですが、僕も感じ様なCDを持っています。
聞いていて、何だかタイムスリップしたような気持ちにさせられます。
持っているのは、ギリシャ製のCDなんですが、読んでも意味は判らない。だから、返って想像力を搔き立てられてしまいます。
ギリシャの山岳地帯をブラブラ歩いて、こんな素朴で力強い音楽に巡り会ってみたいです。
そして、地酒の強いのなんか煽ったら、こりゃあ天国行きだぁ!
by おぎてつ (2013-11-18 08:06)
ギリシャ盤はギリシャ文字しか載ってませんからねえ。
空気の薄そうな山岳地帯では、ことのほか酒も回りそうですね。
by bunboni (2013-11-18 20:16)