エディット・ルフェールに捧ぐ ヴァレリー・ルーリ [カリブ海]
わずか39歳の短い生涯で天に昇ってしまった、マルチニークの歌姫エディット・ルフェール。
2003年に亡くなって、ちょうど昨年で10年だったんですね。
若きマルチニークのディーバ、ヴァレリー・ルーリの新作が届いて、それに気付かされました。
ヴァレリー・ルーリの新作がエディット・ルフェールのトリビュート集とは、
まさに正鵠を得たとゆーか、この人が作らないで誰が作るかてなもんでしょう。
ヴァレリーがデビューした当初は、エディット・ルフェールの再来と、
多くのマルチニーク・ファンを喜ばせましたからねえ。
サブ・タイトルにトリビュートを謳うことは多いけども、メイン・タイトルがそのものすばりとは、
先輩ディーバに捧げるヴァレリーの熱い思いが伝わってくるようですね。
前半はエディット・ルフェールのかつてのレパートリーを歌い、後半はヴァレリーの自作や、
デビュー作以来ヴァレリーの多くの曲を書いているマルク・エルミラの曲を歌っています。
ロキア・トラオレにも似たヴァレリーのマニッシュなルックスも相変わらずなら、
エディット・ルフェール瓜二つの女性らしい歌声も、デビュー当初からまったく変わっていません。
ヴァレリーは、声質・声域・歌いぶり三拍子揃ってエディット・ルフェールと似ているものだから、
アルバム前半なんて、まさにエディット・ルフェールが天国から蘇ったかのように聞こえます。
違うのは、かつてのデジタル・サウンドのズークが、アクースティックな響きに装いを変え、
マルチニークの伝統を生かしたプロダクションの方ですね。
ヴァレリーはもともとダンサー出身で、ブロードウェイでダンスの修行中に、
故郷の民俗舞踏ベレを初めて知り、マルチニーク帰島後、本格的にベレを学んだという人。
地元でベレをまったく知らずに育ったというのも不思議というか、
伝統の遮断も垣間見る思いがしますが、
それゆえアンティーユ民俗舞踊を通じてアフロ文化を深く学び取ったようです。
デビュー作と2作目の前作ともに、ギターとパーカッションを中心としたアクースティックな音づくりで
ベレのモダン化を図るほか、カーボ・ヴェルデ音楽の影響も感じさせる
環大西洋クレオール・ミュージックを聞かせていましたが、
本作でもその方向性が生かされています。
「マルチニーク賛歌」と題したアルバム・ラストのヴァレリーの自作曲では、
そんな彼女のルーツ志向を鮮やかに表明していて、
そのインスト・ヴァージョンでは、話題のマルチニークの新進ピアニスト、
グレゴリー・プリヴァをフィーチャーして締めくくっています。
ちなみにグレゴリー・プリヴァは、ポロ・ロジーヌ亡き後のマラヴォワのピアニストを務めた
ホセ・プリヴァの息子さんですよ。
エディット・ルフェールが生きていたら、きっとこんなサウンドで歌っていたに違いない、
ズークを脱してマルチニークの伝統を再構築した、清廉なアルバムです。
Valérie Louri "EDITH LEFEL TRIBUTE" Aztec Musique CM2413 (2013)
2014-01-15 00:00
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