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UKブラックのスピリチュアル・ジャズ ザラ・マクファーレン [ブリテン諸島]

Zara McFarlane  Until Tomorrow.jpg   Zara McFarlane  If I knew Her.jpg

ザラ・マクファーレンというイギリスのジャズ・シンガーを知ったのは、確か2年前。
デビュー作にしては、ずいぶん落ち着いたジャケットが印象的でした。
ジャズをベースとしながらも、ジャンルに捕らわれない自由さを持った歌い口で、
自作曲にフォーキーなソングライター的資質をうかがわせたり、
ニュー・ソウルとも共振するセンスをみせていて、将来性を感じました。

伴奏はピアノ・トリオで、曲によって3人のサックスが加わるだけという、
正統派ジャズ・ヴォーカル・アルバムともいえるフォーマットなのに、
ザラの繊細な歌い口とストーリーテラーを思わせるナチュラルな歌いぶりが、
イマドキらしい新しさを湛えていて、とても新鮮に思えたからです。

これでサウンド・アプローチをもう少し工夫したら、面白くなるだろうにと思っていたら、
新作はまさにそんな内容となりましたね。
1曲目から聞こえてくるのは、ハングドラムのほわ~んと鳴る幻想的な音。
最近よく耳にするようになった、世界で一番新しく開発された打楽器です。
凛としたザラの声とハングドラムが絶妙な相性で、
冒頭からおおっと引き込まれてしまいました。

基本編成はピアノ・トリオでも、ベースとパーカッションだけで聞かせる曲あり、
トランペットやサックスをフィーチャーした曲あり、
はたまたザラ自身によるアクースティック・ギターの弾き語りありと、
多彩なサウンド・アプローチをみせながら、全体をブルージーなトーンでまとめあげています。

自作曲のほか、ニーナ・シモンや
レゲエのジュニア・マーヴィンやノラ・ディーンの曲をカヴァーするなど、
ジャマイカ人両親のもとに生まれたUKブラックという出自を反映した、
折衷的な音楽志向を打ち出しているんですね。
ザラの音楽性には、カサンドラ・ウィルソンが“BLUE LIGHT 'TIL DAWN” で
たどり着いたブルース感覚と共通するものがあります。

ザラのオーガニックな歌い口には、カサンドラのようなディープな感触こそないものの、
その皮を一枚めくった下には、紺碧の海を思わす神秘をたたえているのを感じさせます。
ザラは新しいスピリチュアル・ジャズの地平を切り開く、UKブラックなのかも知れません。

Zara McFarlane "UNTIL TOMORROW" Brownswood Recordings BWOOD070CD (2011)
Zara McFarlane "IF YOU KNEW HER" Brownswood Recordings BWOOD0112CD (2013)
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