宇宙時代の鄧麗君 [東アジア]
14歳でデビューしたテレサ・テンは、67年から71年のわずか5年間に、
台湾の宇宙レコードへ20枚のアルバム(ベスト盤を除く)を残しました。
デビュー当初のはつらつとした少女時代のテレサの歌には、
歌が好きで好きでしょうがないといったパッションが溢れていて、胸をすきます。
ぼくも二十年ぐらい前、ずいぶん宇宙盤を探し回ったんですけど、
14枚まで集めたところで、ギヴ・アップ。
テレサ人気でどんどんオリジナル盤LPが高騰してしまい、
いまではぼくの手の及ぶ値段ではなくなってしまいました。
宇宙盤はオリジナル・フォーマットでのCD化が長らく実現しませんでしたが、
昨年末、第十集が唐突に紙ジャケ仕様で復刻されました。
宇宙盤でCD化されたのはこれ1枚のみ。同じ「復黑版」シリーズで、
香港・樂風レコード時代のアルバム『海棠姑娘』『少年愛姑娘』も復刻されました。
樂風時代のアルバムは、すでに05年に全作CD化されましたが、
紙ジャケットCD化はこれが初ですね。
今後も宇宙盤の復刻が続くのかどうか、気になるところですけど、
ぜひ全作品をCD化してもらいたいものですねえ。
ところで、熱心なマニアならご存じかもしれませんが、
テレサのデビュー作『鄧麗君之歌第一集』には、二つのヴァージョンが存在します。
「何日君再來」を改題した「幾時你回來」が入っているヴァージョン
(ジャケットの左側矢印の上から二つめの曲名が「只有一個你」)と、
「幾時你回來」が「女兒圈」に差し替えられたヴァージョン
(ジャケットの左側矢印の上から二つめの曲名が「女兒圈」)の二つです。
ぼくは「幾時你回來」が入っているヴァージョンを持っていて、
これがオリジナル盤だとばかり思っていたんですが、実は真相はその逆で、
「女兒圈」が収録されている方がファースト・プレスだということを、最近知りました。
「何日君再來」が文化統制下の台湾で禁歌とされていたことから、
検閲を通すために、「女兒圈」入りのヴァージョンを最初に出して、
あとから「幾時你回來」の入ったヴァージョンを出し直したんだそうです。
どちらのヴァージョンのレーベルにも「民國56.9出版」と書かれていて、
どちらがファースト・プレスなのかまぎらわしかったわけですが、
「民國五十六年十月出版」とクレジットされたサード・プレスに
「幾時你回來」が入っているように、
「女兒圈」が入っているレコードは、ファースト・プレスだけだったようです。
ついでながら、宇宙レコードが倒産した後の72年に、
天聲というレコード会社から再発された『鄧麗君之歌第一集』も持っていますが、
こちらはファースト・プレスのヴァージョンで、「女兒圈」が入っています。
この天聲盤の表ジャケットは、
「只有一個你」が書かれているセカンド・プレスのヴァージョンで、
裏ジャケットは「女兒圈」の歌詞がのった
ファースト・プレスのヴァージョンとなっているという、
ややこしいことになっています。
CD復刻にあたっては、
ぜひ「幾時你回來」「女兒圈」両方を収録してもらいたいものですね。
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第一集 鳳陽花鼓」 宇宙 AWK003 (1967)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第二集 心疼的小寶寶」 宇宙 AWK006 (1967)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第三集 嘿嘿阿哥哥」 宇宙 AWK007 (1967)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第五集 暢飲一杯」 宇宙 AWK011 (1968)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第六集 一見你就笑」 宇宙 AWK014 (1968)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第七集」 宇宙 AWK028 (1968)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第九集」 宇宙 AWK032 (1968)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌十集 聖誕快樂・敬賀新禧」 宇宙 AWK033 (1968)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌十一集 再會吧!十七歳」 宇宙 AWK034 (1968)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第四集 中視長篇電視劇「晶晶」主題歌」 宇宙 AWK010 (1969)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第十五集 花的夢・談情時候」 宇宙 AWK037 (1970)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第十六集 戀愛的路多麼甜」 宇宙 AWK039 (1970)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第十九集 X+Y就是愛」 宇宙 AWK047 (1971)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第二十集 何必留下回憶」 宇宙 AWK048 (1971)
[LP] 鄧麗君 「鄧麗君之歌第一集」 天聲 AWK003
【うれしいニュースです】 2014-03-18
昨年末の第十集に加えて、第二集・第三集・第五~七集・第九集・
第十一・十二・十五~二十集にベスト盤の金唱片、
さらに!デビュー作の第一集もついにCD化しました。
ただし、「女兒圈」入りのオリジナル・ヴァージョンで、「幾時你回來」は未収録でした。
2014-02-02 00:00
コメント(6)
うーん、写真を眺めているだけでも楽しいですね。
ところで、黄色歌謡ってなんですか?
オギテツ
by おぎてつ (2014-02-02 01:13)
いけね、「黄色歌曲」は間違いだったあ。
テレサ・テンの「何日君再來」が中国大陸でも大ヒットしたことから、
共産党が禁じた曲が「黄色歌曲」なんですけど、これは82年のことで、もっと後のことでした。
ごめんなさい。上の文の「黄色歌曲」の箇所を訂正します。
テレサのデビュー当初に「何日君再來」が台湾で禁じられていたのは、
60年代の文化統制下で「禁歌」に指定されていたからです。
「何日君再來」は日中戦争時に中国当局と日本軍の双方から排斥され、
国民党政権下の台湾で禁止され、その後中国大陸側でも禁じられという、
数奇な運命をたどった曲だったんですね。
by bunboni (2014-02-02 10:18)
何日君再來は、李香蘭や渡邊はま子も歌っていましたよね。
そうですか…。
戦時中に男の戦う気を無くさせるような曲はけしからんというわけでしょうか。それと敵国人同士の恋愛はご法度か?
まあ、李香蘭みたいな美人にこんなこと言われたら、とろけますわ。
by おぎてつ (2014-02-02 22:32)
退廃的とみなされたという理由のほかに、「何日君再來」の「君」の中国語の発音が「軍」と同じであるために、抗日戦に敗れ重慶に撤退した「君(=蔣介石)」に向かって「いつ帰ってくるのか」と呼びかける、抗日的な歌と解釈されたり、一方で、「何」が「閡」と同じ発音のため日本軍の再来を阻もうという意味ととられ抗日的とみなされたんですね。
台湾では、日本の植民地統治時代を懐かしみ、終戦後去っていった日本人に向かって「いつ帰ってくるのか」と呼びかけた歌として、国民党政府が禁止したりといろいろな解釈を呼んだのですね。
by bunboni (2014-02-03 06:43)
ベスト盤の金唱片とありますが、勸世歌 と 南遊紀念金唱片のどちらのことでしょうか?
全然詳しくないもので、教えて下さったら幸いです。
by ナックル (2014-05-04 02:03)
『金唱片「勸世歌」』の方です。
『南遊紀念金唱片』は宇宙盤でなく、樂風盤ですね。
by bunboni (2014-05-04 08:09)