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2014年アフリカン・ポップス最高作 ハッサン・ハクムーン [中東・マグレブ]

Hassan Hakmoun  UNITTY.jpg

すごいっ! ついにハッサン・ハクムーンは、最高傑作をものにしましたね。
ひさしぶりのアルバムだった前作“SPIRIT” でも、ハッサンの底力にウナらされましたけど、
今作は間違いなくキャリア・ベストといえる快心の出来。
ユッスー・ンドゥールやサリフ・ケイタといった、アフリカン・ポップスの頂点に立つスターたちが
軒並みレイドバックしているなか、ハッサンが頭一つも二つも飛び出しました。

これまでハッサンの代表作というと、リアルワールドから出た“TRANCE” が定評でしたけれど、
以前も書いたように、過剰にプログレッシヴなサウンドにした“TRANCE” の出来がぼくは不満で、
ハッサンのバンド名義で出した“ZAHAR” の粗削りなグナーワ・ロックの方が、
ハッサンのグナーワの魅力をストレイトに表していると思っていました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-12-29
しかしそれももう二十年以上も前の昔の話。
新録でこの“ZAHAR” に匹敵する、原点回帰の作品を作り出すとは予想だにしませんでした。

演奏はすべて人力。打ち込みなしという潔さが嬉しいじゃないですか。
ハッサンが弾くゲンブリ(ハッサン曰くシンティール)の重低音を核に、
全編シンプルなファンク・ロックのビートで突き進むサウンドのすがすがしさったらありません。
ジャズやロックなど音楽的な試行錯誤の末にたどりついた、
この無駄のない筋肉質なサウンドには、
ハッサンのヴェテランらしい自信と、意欲がみなぎっています。

余計な力を入れずとも、ハッサンのダミ声ヴォーカルは十分パワフルで、
母音をぐぅーっと伸ばしてシャウトするところなど、
人間国宝クラスの浄瑠璃の太夫がみせる、確信に満ちた技量に通じるものを感じさせます。
ハッサンの最大の魅力というと、やはりこのヴォーカルにつきますね。
多くのマアレムたちとの違いは、ハッサンの華のある声とその柔軟な歌いぶりでしょう。

そんな円熟したヴェテランらしい味わいは、“TRANCE” に収録された曲の再演でも明らかです。
かつてのハッタリ十分なサウンド・エフェクトは姿を消し、
シンプル・ストレイトなファンク・ロックのサウンドは、
鍛え上げられたアスリートの筋肉を思わせます。

今作でハッサンがみせた音楽面での挑戦は、
グナーワをアフリカ音楽とはっきり位置づけたことでしょう。
セネガルの打楽器サバールやフラニ(フルベ)の笛を取り入れたのも、サウンド・エフェクトではなく、
グナーワの持つグルーヴと一体化させたところにそれが表れています。
ハッサンが90年代にレゲエを取り入れたような単なるミクスチャーではなく、
グナーワのルーツがアフリカ音楽であることを、
ブラック・アフリカンの子孫グナウィとして宣言したのが本作なのだと、ぼくは受け止めました。

アフリカン・ポップスでもっとも高みにあるヴェテランが
ユッスーとサリフという時代は、完全に終わりました。
二人に代わるのは、ハッサン・ハクムーンとオリヴァー・ムトゥクジです。

Hassan Hakmoun "UNITY" Healing no number (2014)
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