日本でレコード・デビュー ミッジ・ウィリアムス [北アメリカ]
♪あーさは~ おそくまで~ ゆっくりとかれはね~ます~♪
♪しごとはおるす~ ねどこがてんご~く~♪
ミッジ・ウィリアムスが歌う脱力ソング“Lazy Bone” です。
ミッジ・ウィリアムスはまだ19歳という若さで昭和8年(33年)に来日し、
8ヶ月滞在する間に帝国ホテルや溜池のダンスホール「フロリダ」で歌い、大評判となりました。
昭和ゼロ年代という日本のジャズ創生記、
まだ日本人が舶来音楽のリズム感を体得できていなかった時代に、
ミッジのスウィング感あふれる歌いぶりは、さぞ衝撃的だったに違いありません。
ミッジは来日時にデビュー録音となる5曲のレコーディングを残し、
そのうちの3曲“Lazy Bone” “St. Louis Blues” “Dinah” は、
『日本のジャズ・ソング③~戦前篇・ジャズシンガー・トップレディース・トップガイズ~』や、
スウィング・タイム・プロダクションズ盤で聴くことができます。
前半をタドタドしい日本語で、後半を英語で歌ったエキゾティックなジャズ・ソングがもう絶品。
残り2曲“Bye Bye Blues” “Paradise” が長く未復刻のままだったんですが、
“Bye Bye Blues” は一昨年出た『スウィング・タイム1928-1941』で、
“Paradise” も先日ぐらもくらぶが出した『大東京ジャズ1925-1940』で、
ついにCD化されました(パチパチ)。
スウィング・タイム・プロダクションズ盤には、ミッジと一緒に日系二世のベティ稲田が写った
珍しい写真が載っていますけど、当時もてはやされた日系歌手のベティ稲田はじめ
ヘレン隅田や宮川はるみと比べても、ミッジは段違いのノリを持っていました。
日本のジャズ・シンガーの草分けといわれる川畑文子ですら、
ミッジのニュアンスのこもった豊かな表情と比べたら、まるで「月とスッポン」です。
ルディ・ヴァレーのNBCラジオ番組に出演した時のトランスクリプションでは、
偽チャイナ風のイントロがついた日本語による“Dinah” を歌っているのが面白いところ。
日本でコロムビア・ジャズ・バンドを伴奏に吹き込んだ“Dinah” には、
もちろんこんな「いんちきオリエンタル」アレンジは施されていませんでした。
第1集にはベニー・グッドマン楽団のピアニストを務めたフランク・フレーバのバンドで歌った曲に、
テディ・ウィルスンのブランズウィック・セッションや、ミッジ名義の録音が収録されています。
いずれも天性のリズム感に加え、語りかけるようなリラックスした唱法を聞かせていて、
ミッジがスウィング・スタイルのジャズ・ヴォーカルの先駆者であったことを証明しています。
可憐なたたずまいの写真の第2集では、ミッジの歌はさらに成熟し、
のちのリー・ワイリーを彷彿とさせる、小股の切れ上がった歌唱がたっぷりと堪能できます。
スウィング感をしっかりと感じさせながらも、力を抜いた歌唱が絶妙で、
いわゆるトーチ・シンガーの歌唱レベルをはるかに凌いでいますね。
センチメンタルな歌い口に、絶妙なリズムへのノリを感じさせるところが、ミッジのスゴいところ。
ウットリしつつも、そのウマさにうならされてしまいます。
Midge Williams "THE COMPLETE MIDGE WILLIAMS VOLUME #1" Swing Time Productions 2005
Midge Williams "THE COMPLETE MIDGE WILLIAMS VOLUME #2" Swing Time Productions 2006
2014-05-17 00:00
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