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ニジェール川を下って【前篇】 [西アフリカ]

The Divine River.jpgニジェール川流域に暮らす人々の音楽を
訪ね歩いた旅の記録、といったふうなこのDVD、
トゥアレグやハウサの音楽を映像化していて、
目が釘付けになりっぱなしなんですが、
映像にナレーションやテロップはいっさい付かず、
DVDケースにも解説はなく、取り付くシマがありません。
ジャケット裏に、07年から12年にかけて
マリとニジェールで撮影されたというクレジットのほか、
内容についてごく簡単な記載がありますが、
記載内容がどのチャプターのものかわからず、
こんな不親切な書き方じゃ、さっぱりわかりません。

本編47分は、小舟にのった少年がオールを漕ぎながら
ニジェール川を進むシーンから始まります。
少年のシャツの背にプリントされた
サダム・フセインの写真に目がとまりますが、
舟を川べりに止めると、シーンは変わり、
カラフルなデザインを施した土壁の住居が映しだされます。

チャプター2は、その住居の狭い軒先の下で、
3台のカラバシと小型の1弦リュート、クンティギの伴奏にのせて、
マイクを持った歌い手が大勢集まった村人たちを煽るように歌い、ダンスへと誘います。
着飾った子供や女性たちが、膝を曲げて優雅にステップを踏んだり、
前かがみになって、腕やお尻を揺らしながら小刻みなステップで踊ります。

アンプリファイドされたクンティギの音色が強烈で、
音が割れているものだから、まるでフィドルのように聞こえます。
ジャケット裏の記載によれば、彼らは少数民族のウォゴ人とのこと。
ウォゴはソンガイ語派なので、ここで聞ける音楽もソンガイの音楽によく似ています。

チャプター3は、美しく化粧したワーダベ人男性たちが、横一列に並んで踊る求愛ダンス。
このダンスは女性たちが選ぶ美男コンテストで行われるもので、
両腕をゆったりと前に揺らしながら、ポリフォニーのコーラスを歌っています。
美男の象徴とされる、白目や白い歯を強調して表情を競う様子がよく捉えられています。
ワーダベはトゥアレグ同様、砂漠の遊牧民で、この美男コンテストの儀式は、
キャロル・ベックウィズやアンジェラ・フィッシャーの写真集などで目にしてきましたが、
背景がサハラ砂漠ではなく、緑の木々を背景にしたロケーションというのが珍しく見えました。

チャプター4は、だだっ広いサヴァンナの中で1弦フィドルのゴジェを弾くハウサのグリオ。
サングラスをかけ、片方の袖だけ通したジャケットを着たその姿は、
まるでサップールのよう。カッコよすぎます! 
チャプター5は、室内でアクースティック・ギターを弾き歌うトゥアレグ人と、
ンゴニと同じ弦楽器のモロを弾くザルマ人のデュオ。
モロの金属的な弦の響きが耳残りします。
チャプター6は、手書き文字がずらっと並ぶブートレグ・カセット屋のカセットを、
舐めるように映したショットの短いインタールード。

チャプター7は、バンジョーを小ぶりにした円形ボディの弦楽器を弾き歌うハウサのグリオ。
コムサという耳なれない楽器名がジャケット裏に書かれていますが、
手元にあるハウサの民俗音楽の文献を紐解いても、コムサという名前の楽器は出てきません。
ハウサのもっともポピュラーな弦楽器といえばグルミですけれど、
コムサはグルミのロング・ネックをぐっと短くした形で、グルミより軽く乾いた音色を響かせます。
水平ではなく縦に楽器を構え、人差し指と中指で2本の弦を弾きながら、
親指でボディの皮を叩いて、パーカッシヴなサウンドを生み出しています。
ネックの先にはじゃらじゃらとノイズを発生する、リング付きの金属片が付いています。

というところで話が長くなってきたので、後半は次回へ。

[DVD] a film by Hisham Mayet "THE DIVINE RIVER : Ceremonial Pageantry in The Sahel" Sublime Frequencies SF075 (2012)
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