70年前後のモダン・ビギン・セッション [カリブ海]
グアドループのレコード会社セリニから73年にリリースされたモダン・ビギンのアルバム2作が、
フランスのフレモオ・エ・アソシエによって2イン1のカップリングCDとして復刻されました。
1枚はクラリネット奏者ロベール・マヴンジと
トロンボーン奏者アル・リルヴァのヴェテラン二人の名義による、
戦前ビギンの巨人アレクサンドル・ステリオへオマージュを捧げたアルバムで、
もう1枚はグアドループのギタリストで名作曲家のジェラール・ラ・ヴィニのアルバム。
ロベール・マヴンジとアル・リルヴァのアルバムは、すでに08年にセリニがCD化していて、
そのセリニ盤CDは、ロベール・マヴンジの母親マダム・マヴンジの69年作と、
カップリングの2枚組となっていました。
セリニ盤はクレジット・解説皆無なので、今回フレモオ・エ・アソシエ盤の詳細な解説のおかげで、
ロベール・マヴンジとアル・リルヴァのアルバムは、
アラン・ジャン=マリーのグループがバックを務めていたことが判明。
ジェラール・ラ・ヴィニのアルバムの方も、
同じくアラン・ジャン=マリーのグループがバックをつけています。
フレモオ・エ・アソシエ盤の2枚がパリでのセッションならば、
マダム・マヴンジの69年作の方はグアドループ録音で、
息子のロベール・マヴンジとエミリアン・アンティルがバックを務めています。
マダム・マヴンジの婆さん声は正直ツラいものがありますが、
元気いっぱいに歌っているところは、感心させられます。
バックでアルト・サックスを吹く、エミリアン・アンティルのシャープなブロウも聴きものですね。
アル・リルヴァとの共同名義の73年パリ録音でのロベール・マヴンジは、
正直、絶頂期をとうに過ぎてしまった感は否めません。この翌年に亡くなってしまったのだから、
無理もない話なんですが、そのかわりロベールと交替でクラリネットを吹いている
モーリス・ノワホンがはつらつとしたプレイを聞かせています。
馬のいななきを思わせるプレイなんて、ステリオ直系そのものですね。
ダンディな歌で楽しませるジェラール・ラ・ヴィニのアルバムでは、
アラン・ジャン=マリーのピアノに加え、ロジェ・コラのヴァイオリンがなんともロマンティック。
ハーモニカやバンジョーなども使ったポップ・センスに、ジェラール・ラ・ヴィニらしさが表れています。
70年前後といえば、ビギンはすでに過去の音楽となり、世の流行とは縁がなくなっていた頃で、
フレンチ・カリブはハイチ音楽が席巻していた時代でした。
それでもヴェテランを中心に、こんなすがすがしいビギンを聴くことはまだできていたんですね。
グアドループの弱小レコード会社のセリニが、
消えかかるビギンの灯を守ろうとした貴重な記録が、ここにはあります。
Robert Mavounzy - Al Lirvat - Gérard La Viny avec Alain Jean-Marie Et Son Trio
"ANTILLES EN FÊTE" Frémeaux & Associés FA5458 (1973)
Al Lirvat, Robert Mavounzy, Mme Mavounzy "NOSTALGIE CARAÏBES" Celini 018.2 (1969/1973)
2014-10-08 00:00
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