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芳醇なオールディーズ・ルンバ ウタ・マイ [中部アフリカ]

Wuta Mayi  LA FACE CACHÉE.jpg

な~んて芳醇なルンバ・コンゴレーズなんでしょうか!
グッド・オールド・デイズなサウンドに、身も心もトロけます。

コンゴ音楽史上最高の名門楽団TPOKジャズに74年に入団し、
フロント歌手の一人として活躍したヴェテラン歌手、ウタ・マイの新作です。
前回のランバート・カバコの遺作にも、ウタ・マイはコーラスに加わっていましたけれど、
ソロ・アルバムはいつ以来ですかね。ウン十年ぶりなんじゃないのかしらん。

TPOKジャズ以降のウタ・マイのキャリアを振り返ると、
コート・ジヴォワールのプロデューサーによって編成された
レ・カトル・エトワールで、82年から96年まで活動していましたね。
レ・カトル・エトワールは、美声歌手として名をはせたニボマに、
ギタリストのシラン・ムベンザ、ベーシストのボポール・マンシャミナに
ウタ・マイの4人でしたけれど、このうちボポールを除く3人が、
00年にイブラヒム・シラが仕掛けた
コンゴ音楽リヴァイヴァル・プロジェクトのケケレへと合流します。

こうして考えると、ウタ・マイやニボマは、ルンバ・ロック以降のトレンドにのることなく、
古き良きルンバ・コンゴレーズの味を保った音楽をやり続けてきたんですね。
それがけっしてマンネリにならなかったのは、昔のスタイルをただなぞるのではなく、
サウンドにさまざまな工夫を凝らした、プロデューサーの力が大きかったように思います。

特にケケレの場合は、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのブームに押されて、
ヴェテランたちの音楽に目を向けられたことが追い風となりました。
ウタ・マイの本作も、まさにそんなレ・カトル・エトワールからケケレの活動で
得たナレッジが、サウンド・プロダクションに生かされているのを感じます。

まず、耳をそばだてられるのが、アコーディオンの起用。
60年代のカミーユ・フェルジを思い起こされずにはおれないわけで、
優雅なルンバにアコーディオンの響きは、もう絶妙というほかありません。
せっかくヴェテランが昔懐かしいルンバを歌っても、
バックのシンセサイザーが興ざめになることもしばしばなので、
このアコーディオン起用は大正解ですね。

ニボマを筆頭とするコーラス隊の美しいハモリにも、うっとりさせられます。
そして、サックスとトランペットのルーズなサウンドにも頬が緩みます。
ぴたっとは合わない、ばらけたホーン・セクションが、
60~70年代コンゴ音楽のテイストを伝えるかのようで、嬉しくなります。

そんな大らかなサックスと甘いエレクトリック・ギターが活躍する‘Trop C’est Trop’ は、
3-2のクラーベがなんともスウィンギー。
アクースティック・ギターとフルートを効果的に使った、
アンプラグドなルンバの‘L’union Forcée’ なんて、
ケケレの経験を生かした好トラックでしょう。
70近い年齢を感じさせないウタ・マイのなめらかなヴォーカルは、まさに円熟の極み。
ヴェテランでしか成しえない素晴らしいアルバムです。

Wuta Mayi "LA FACE CACHÉE" Debs Music no number (2019)
コメント(2) 

コメント 2

飛鳥

パリより取り寄せて、ようやく聴くことができました。
極上のコンゴ・ルンバですね。そして、本物の癒やしの音楽です。優雅なルンバにアコーディオンの響きは正に絶妙で、透明度が増すように思います。フランコが、フェルージ・カミーユを迎えて収録したアルバムが思い出されます。
古き良きコンゴ・ルンバのようで、しかし古くはない。すべてが絶妙と感じさせるアルバムだと思います。
by 飛鳥 (2019-09-01 16:28) 

bunboni

そうなんです。「古き良き」サウンドのようで、実は60年代にこんなサウンドはなかった。リクリエイトされたオールド・ルンバ、そこにこの音楽の素晴らしさがありますね。
by bunboni (2019-09-01 16:39) 

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