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一匹狼の民謡無頼派 中西レモン [日本]

中西レモン  ひなのいえづと.jpg

民謡クルセイダーズや俚謡山脈に続く、民謡の新解釈派でしょうか。
中西レモンは、初代桜川唯丸流の江州音頭を学び、
関東に広めようと活動している人とのこと。
若い頃から東北の民謡や越後の瞽女唄に興味を持ち、
各地を訪ねて人と出会い、フィールドワークしながら歌ってきたんだそうです。

家元という制度に与しなかった、一匹狼の無頼派たる心意気が、
中西の歌いぶりからビンビンと伝わってくるようじゃないですか。
こぶし回しに、しっかりとした鍛錬を感じさせる一方で、
技巧に溺れない歌への情熱が、野趣な味わいとなって
しっかり溢れ出ているところが、頼もしいですよ。

そしてそんな中西をバックアップする、伴奏のアレンジのたくらみが、またスゴイ。
昭和歌謡な「ホーハイ節」、インドのタブラとイランのダフが伴奏する「斎太郎節」、
キューバのトローバに変貌する「とらじょさま」など、どんだけ引き出し持ってんだと驚嘆。
シンガー・ソングライターのあがさという人がアレンジをしているんですけれど、
レゲエやアフロビート、はたまたクンビアといった、ワールド・ミュージック的音楽要素を、
いっさい援用していないところが、この人、わかってるというか、知識の深みを感じます。

ブルースやジャズのスケールやテンション・ノートといった、
日本民謡にない和声の使用を慎重に避けているようで、そこにもめちゃ好感が持てます。
日本民謡に限った話じゃないですけど、伝統音楽の現代化にあたって、
ジャズぽくアレンジするのとかって、凡庸なアイディアで、ダサイじゃないですか。
おそらくこのあがさという人は、そのあたりをちゃんと意識してアレンジしていますね。

アイディアは豊かだけれど、奇をてらっていない。
日本民謡の演奏に、アジア、アラブ、アフリカの楽器を使っても、
その響きが浮くことなく、しっくりと溶け合っている。
あがさのプロデュースの手腕、見事なもんです。

そしてジャケットのカヴァー・アートを描いたのは、中西レモン本人だそう。
え~! 画家としての才能もスゴイじゃないですか。
大学で絵画表現を専攻したそうで、パフォーマンス・アートや舞踏にも関心をもち
04年から14年までショーケース形式の舞台企画を運営していたというのだから、
多才ですねえ。

中西レモン 「ひなのいえづと」 ドヤサ! DYS005 (2022)
コメント(2) 

コメント 2

Astral

さわりを聴いただけですが、サム・リーのデビュー作を思い出しました。こういう日本民謡が聴きたかった!
by Astral (2022-10-06 18:33) 

bunboni

ああ、そうだ。まさしくサム・リーのプロダクションのアイディアに匹敵しますね。Astralさん、さすが。
by bunboni (2022-10-06 20:05) 

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