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ポスト・アパルヘイト時代のジャズの担い手 アンディレ・イェナナ [南部アフリカ]

Andile Yenana  WHO’S GOT THE MAP.jpg

マッコイ・ムルバタのアルバムを聴いていて、
アンディレ・イェナナのピアノがすごく良くって、
たしかソロ作を持っていたよなあと、棚をゴソゴソ。
あった、あった、07年作の“WHO’S GOT THE MAP?”。

正直なところ、中身をぜんぜん覚えていなくて、
あらためて聴いてみたら、こんな秀作だったとは、オドロキ。
トランペット、サックス、ベース、ドラムス、パーカッションのセクステット。
セロニアス・モンクの影響をうかがわせる楽曲に、
トーン・クラスターを多用するところも、もろにモンク。
同時代性のコンテンポラリーなジャズのなかに、
しっかりと南ア・ジャズの伝統が息づいていることがわかる演奏で、
しなやかな柔軟性をうかがわせるところに、新しい南ア世代の息吹を感じます。

すっかり感じ入ってしまって、ほかにどんなアルバムが出ているのかチェックしてみたら、
このアルバムと、02年に出た初ソロ作の2枚しかないんですね。
昨年、デジタル・リリースでビッグ・バンドとの共演作を出したようなんですが、
リーダー作の少ない人なんだなあ。
そのわりには、あちこちでアンディレ・イェナナの名は目にするよねぇ。
この夏に出たトゥミ・モゴロシの新作にも参加していたし。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-08-21

Zim Ngqawana  ZIMOLOGY.jpg   Zim Ngqawana  ZIMPHONIC SUITES.jpg
Mahube Music From Southern Africa.jpg   Louis Mhlanga  SHAMWARI.jpg

サックス奏者ジム・ンガワナと長く一緒に活動して、
ジム・ンガワナの代表作に名を残したほか、
サックス奏者スティーヴ・ダイアーが企画した南部アフリカ音楽プロジェクト、
マフベの一員でしたね。マフベには、オリヴァー・ムトゥクジも参加していたんだよな。
ほかに、南アにやってきて名声を得たジンバブウェ人ギタリスト、
ルイス・ムランガの名作“SHAMWARI” でも、サウンド・メイキングの要を担っていたし、
以前取り上げたベース奏者、ムルンギシ・ゲガナのアルバムにも参加しています。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-08-30

本作を数回聴いただけで、棚にしまっちゃった理由も、今としては良く分かるな。
アブドゥラー・イブラヒム世代のゴリゴリの南ア・ジャズと比べて、
南ア色が薄まったように思えて、当時は物足りなく感じたんでしょう。
アンディレ・イェナナは、68年東ケープ州キング・ウィリアムズ・タウン、
現在のコンエの生まれ。この世代の南ア・ジャズの音楽家は、
先達の伝統を引き継ぎつつも、コンテンポラリー色を強めて、
自分たちの世代の洗練されたグローバルなジャズを目指していたんですよね。

アパルトヘイトが撤廃された94年に、南アで設立されたインディ・レーベル、
シアー・サウンドもまた、そうしたポスト・アパルヘイト時代に向けて
新しいジャズを後押ししていたことが、今となってはよく理解することができます。

なめらかなピアノの音色の美しさを聞かせるソロ・ピアノに、
この世代ならではのしなやかさを感じます。

Andile Yenana "WHO’S GOT THE MAP?" Sheer Sound SSCD120 (2007)
Zim Ngqawana "ZIMOLOGY" Sheer Sound SSCD038 (1998)
Zim Ngqawana "ZIMPHONIC SUITES" Sheer Sound SSCD072 (2001)
Mahube "MUSIC FROM SOUTHERN AFRICA" Sheer Sound CHRSS75010 (1998)
Louis Mhlanga "SHAMWARI" Sheer Sound SSCD074 (2001)
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