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磨き上げられたエルメート・ミュージック イチベレ・ズヴァルギ [ブラジル]

Itiberê Zwarg & Coletivo Músicos Online  TOCAM HERMETO PASCOAL.jpg

昨年日本人オーケストラによるアルバムを出した、
エルメート・パスコアール・ミュージック最良の継承者、イチベレ・ズヴァルギが、
はやくも新作を届けてくれました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-06-29

前回同様イチベレの自主制作で、コレチーヴォ・ムジコス・オンラインという
初めて聞くバンド名が付いています。
パンデミックのために、メンバー全員を集めての録音がままならなくなったことから、
イチベレの息子のドラマー、アジュリナ・ズヴァルギがオンラインで制作する
アイディアを思いつき、このバンド名が付けられたとのこと。

メンバーはアジュリナのほか、イチベレの娘のマリアナ・ズヴァルギ(フルート)に、
サー・レストン(ベース)、カロル・パネッシ(ヴァイオリン)など、
イチベレのグルーポおなじみの仲間に加え、ジョタ・ペー(サックス)、
ベト・コレア(ピアノ、アコーディオン)といった敏腕の音楽家が集まりました。
ゲストにジエゴ・ガルビン(トランペット)も参加しています。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-10-09
イチベレはベースを弾かず、アレンジに専念していて、
オンライン制作であることを意識させない、緻密かつ精緻な演奏を繰り広げています。

今作はタイトルにあるとおり、エルメート・パスコアールの未発表曲集。
本作の制作は、エルメートと24年に渡り交流を重ねてきた、
テキサスのメキシコ系アメリカ人ベーシストのマニー・フローレスが所有していた、
エルメート手書きの譜面を演奏するという企画から始まりました。

まるで絵画のように額装され、
マヌエルの自宅に飾られていたという譜面から8曲が厳選され、
誰よりエルメート音楽の構造を理解するイチベレがアレンジを施しました。
このほか、イチベレのオリジナル曲(コレチーヴォ・ムジコス・オンラインではなく、
グルーポによる演奏)と、マニー・フローレスのオリジナル曲の2曲を
加えた計10曲が収録されています。

イチベレがメソッド化したエルメート・ミュージックは、
エルメート自身が演奏する音楽より、はるかに豊かな色彩感を持ち、
どんなに複雑な展開も、これみよがしになることなく、自然に流れていきます。
プリテンシャスなヴォイス・パフォーマンスで、
天才的な音楽アイディアもすべて台無しにしてしまう、
エルメートのエキセントリックな側面をずっと嫌悪してきただけに、
イチベレの演奏は、エルメートの音楽をこういうスタイルで聴きたいと、
長年願ってきた理想の姿を、ぼくに示してくれます。

Itiberê Zwarg & Coletivo Músicos Online "TOCAM HERMETO PASCOAL" Torto TORTO018 (2022)
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