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ブラック・ロンドンが生んだUKレゲエ ソウル・リヴァイヴァーズ [ブリテン諸島]

Soul Revivers  ON THE GROVE.jpg   Soul Revivers  GROVE DUB.jpg

なんだ、この写真?
ジャケットの白黒写真に漂う不穏な空気に、ピンとくるものがあって、ジャケ買い。
クレジットを見たら、おぉ、チャーリー・フィリップスの写真じゃないですか。

オネスト・ジョンズの『ロンドンはおいら向きの場所』シリーズ第2集の、
白人女性と黒人男性カップルのジャケット写真、覚えてます?
あの写真を撮ったのが、チャーリー・フィリップスですよ。

LONDON IS THE PLACE FOR ME 2.jpg

チャーリー・フィリップスは、44年ジャマイカ、キングストンの生まれ。
11歳の時、ロンドンでレストランを経営していた両親と合流し、
西ロンドンのノッティング・ヒルで育ちました。
ロンドンで暴動や黒人差別を体験しながら、
ブラック・ロンドンをドキュメントするフォトグラファーとなった人です。

そのチャーリー・フィリップスの写真をあしらった本作のクレジットによれば、
70年代のロンドンで、リプケがノッティング・ヒル・カーニヴァルに向け、
サウンド・システムをセット・アップしているところを撮ったものだそう。
様子をじっとうかがう警官二人が、これからひと悶着ありそうな雰囲気ですね。

リプケといえば、UKレゲエ・ファンにはおなじみのDJ、リロイ・アンダーソン。
リタ・マーリー(ボブ・マーリー夫人)の弟としても知られる
リロイ・アンダーソンは、80年にUK初の黒人音楽専門海賊ラジオ局、
ドレッド・ブロードキャスティング・コーポレーション(DBC)を開局し、
ラドブローク・グローヴやニーズデンなどの西ロンドンのリスナーに向けて、
84年まで放送した伝説のDJ。
この写真のロケーションも、ラドブローク・グローヴなのだそうです。

ラドブローク・グローヴといえば、レゲエの街。
ラドブローク・グローヴ駅のすぐ脇にあるレゲエのレコード専門店、
ダブ・ヴェンダーは、レゲエ・ファンなら知らぬ人はいないでしょう。
ぼくも90年にロンドンに訪れたさい、ダブ・ヴェンダーで、
ラヴァーズ・ロック・シンガーのコフィとばったり出くわしたんですよねえ。
すんげえ美人で、カメラを携えていなかったのは、痛恨でありました。

ジャケット写真だけでも、語らなきゃいけないことの多いアルバムなんですが、
ジャケット内側にも、ノッティング・ヒル・カーニヴァルのサウンド・システムや、
キングストンのタフ・ゴング・スタジオなど、ロンドンとキングストンで撮られた写真が
9点飾られています。

で、ようやく本題。
ソウル・リヴァイヴァーズって、何者?という話なんですが、
UKダブのパイオニア、ニック・マナッサと、ディープ・ハウスの名門レーベル、
ニューフォニックを主宰するデイヴィッド・ヒルによるプロジェクトとのこと。

ロンドンとキングストンとのつながりを描いた、ジャマイカ系イギリス人作家、
ヴィクター・ヘッドリーのベスト・セラー作 “YARDIE” を、
イドリス・エルバが映画化するにあたって、
デイヴィッド・ヒルが音楽コンサルタントとして参加したことをきっかけに、
マナッサと組んでレコーディングすることになったのだそうです。

ニック・マナッサがベース、キーボード、ギター、パーカッション、
プログラミングを担当し、曲ごとにさまざまなミュージシャンをフィーチャー。
レゲエ・シンガーのアール・シックスティーン、ヴィンテージ・ソウル・シンガーの
アレクシア・コーリー、アフロ・ジャズ・バンド、ココロコのトランペット奏者
ミズ・モーリスのほか、話題を呼びそうなのが、
アーネスト・ラングリンとケン・ブースの起用。
二人の録音はジャマイカで行われています。

レコーディングとミックスは、ラドブローク・グローヴのスタジオで行なわれていて、
アルバム・タイトルとラドブローク・グローヴのリプケの写真を
ジャケットに選んだのも、それゆえなのですね。
洗練されたサウンドは、BGMのように聞けてしまうなめらかさで、
緊張感はありませんけれど、UKレゲエのツボを押さえた、
この二人らしい作品といえます。

Soul Revivers "ON THE GROVE" Acid Jazz AJXCD604 (2021)
Soul Revivers "GROVE DUB" Acid Jazz AJXCD648 (2022)
Young Tiger, Ambrose Campbell, West African Rhythm Brothers, Lord Kitchener, Lord Beginner, The Lion and others
"LONDON IS THE PLACE FOR ME 2: CALYPSO & KWELA, HIGHLIFE & JAZZ FROM YOUNG BLACK LONDON"
Honest Jon’s (UK) HJRCD16
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