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充実していた日本の70年代ジャズ 日野元彦 [日本]

日野元彦カルテット+2 FLYING CLOUDS.jpg   日野元彦カルテット+1 流氷+2.jpg

うわぁ、これ、『流氷』の続編じゃないですか。
76年2月7日根室市民会館で録られた、トコさんこと日野元彦のライヴ盤『流氷』。
高校3年の時にリアルタイムで聴いた、日本の70年代ジャズを代表する名盤です。
近年の和ジャズ・ブームのおかげか、LP未収録の2曲を追加して、
当日の演奏順でCD化された時は、嬉しかったなあ。
で、今度は『流氷』の3か月後、5月27日に東京のヤマハホールで録音された
未発表音源が出るっていうんだから、こりゃあ聴かないわけにはいかないよねえ。

東京のライヴは、根室と同じ、トコ、山口真文、清水靖晃、渡辺香津美、井野信義に、
パーカッションの今村祐司を加えたセクステット。
どちらのライヴも、「流氷」が1曲目に演奏されていますけれど、
東京のライヴは、根室のより8分も長い。トコが弾くミュージック・ソウに始まり、
井野の弓弾きによるベース・ソロが7分半ほどあり、
山口と清水の2テナーによるテーマが始まるまでの前奏が長くなっています。

やっぱスゴいのは、香津美のギター。
ソロの組み立てが、すさまじくイマジネイティヴで、オリジナリティに富んでいます。
根室の時とぜんぜん違うリックを繰り出してて、
アイディアがいくらでも溢れ出ていたんだなあ。
香津美がトコを挑発するようなギター・ソロを繰り広げると、
トコが激しくシンバルを乱打するドラミングで迎え撃ち、
もう完全に二人の対決試合。聴いてるうちに金縛りにあって、心臓バックバクです。

この時、まだ香津美は、22歳なんだよなあ。
いや、むしろその若さゆえ、プレイがトガりまくっているわけだけど。
なんせ香津美とトコさんのコンビは、香津美17歳のデビュー作『INFINITE』(71)から
始まっているんだもんねえ。十分、相手の手の内を知ったインタープレイなんだよね。

あと、根室のライヴでびっくりしたのが、わずか20歳だった清水靖晃のテナー。
山口真文との2サックスで、ぜんぜん山口に負けていないどころか、
凌駕するプレイに、ドギモを抜かれました。
東京のライヴでは、のちのマイケル・ブレッカー・スタイルを
予感させるシーツ・オヴ・サウンドを聞かせています。

ぼくは『流氷』で初めて清水靖晃の名前を知りましたが、
この2年後にフュージョンのデビュー作を出し、マライヤで活躍することになるんだから、
当時の日本のジャズ・ミュージシャンの進化のスピードは、ほんと日進月歩だった。
香津美だってこの3年後は、YMOのサポート・メンバーだもんね。
当時の日本のジャズが、いかにイキオイがあったかってことなんだけど、
これをリアルタイムで体験できたのは、恵まれていたなあ。

トコさんのドラミングも、大好きなんですよ。
うっるせえなあ、と笑っちゃうくらい派手にトップ・シンバルを叩きまくるんだけど、
アンサンブルのバランスの取り方が絶妙なんだよね。
あと、明るいんだ、トコさんのドラミングは。陽性でカラッとしていて、爽快。

東京のライヴでは、香津美のオリジナル「オリーヴス・ステップ」での
ドラムス・ソロが最高です。この曲、翌年にベター・デイズから出た
香津美のソロ作のアルバム・タイトル曲だけれど、
ソロ作ではフュージョンだったのが、こちらでは完全モード・ジャズのスタイルで
演奏されていて、ジャズ・ギタリスト時代を知らない香津美ファンに聞かせたい。

日野元彦カルテット+2 「FLYING CLOUDS」 Days Of Delight DOD030
日野元彦カルテット+1 「流氷+2」 スリー・ブラインド・マイス CMRS0045  (1976)
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