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驚嘆のジャズ・コンポジション シマックダイアローグ [東南アジア]

SimakDialog  GONG.jpg

インドネシアのジャズのレヴェルの高さに圧倒された一作。

13年までトーパティが在籍していた、シマックダイアローグ。
トーパティがいた頃は、エレクトリック・ジャズとガムランを融合させた、
プログレッシヴなジャズ・ロックをやっていたんですけれど、
当時はあまり評価できなかったんですよねえ。

こうした方向の音楽性では、トーパティ・エスノミッションが
圧倒的な完成度を披露していたので、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-06-07
シマックダイアローグはその域に到達できなかったバンドと、ずっと思っていたんです。
まさかこんなにガラリと音楽性が変わっていたとは、知りませんでした。
19年の本作は、ピアノ、ベース、クンダンに女性のヴォイスが絡む、
アクースティックなジャズを演奏しています。

本作はタイトルが示すとおり、「ゴング1」「ゴング2」「ゴング3」「ゴング4」と
題された4曲が冒頭に収録されています。
どの曲も、具象と抽象を行き来するような構成を持った長尺のコンポジションで、
独特な場面展開をするフリー・フォームな音楽世界に引き込まれます。
なんでも、リーダーのピアニスト、リザ・アルシャドがゴングとガムランの倍音を解析して、
ゴングとガムランのハーモニーの対話を、コンポジジョンに落とし込んだとのこと。
それだけの説明では、リザが目指した音楽性を理解することは難しいんですが、
透徹した美学に基づかれて作曲されていることだけは、しっかり伝わってきます。

本作のレコーディング中の17年に、リザ・アルシャドが心臓発作で急逝してしまい、
3曲が完成したところで中断を余儀なくされたそう。
2年のブランクを経て、リザの遺志を引き継いで、
残りの4曲をスリ・ハヌラガがピアノを弾き、19年にアルバムを完成させました。
リザ・アルシャドが弾いたのは、M1・4・6、
スリ・ハヌラガが弾いたのはM2・3・5・7ですが、
両者のピアノの違いが意識される場面はなく、徹頭徹尾耳残りするのは、
リザのインテレクチュアルなコンポジションの鮮やかさですね。

静謐な音世界にミアン・ティアラのヴォイスが絡むと、
リリカルな温かみが音楽に滲んでいって、美しさがいっそう増します。
タチアーナ・パーラとヴァルダン・オヴセピアンあたりが好きな人にも、刺さりそう。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-03-27
あえて不満をいうなら、クンダンのプレイが、ぱっとしないことかなあ。
スンダにはクンダンの名手が大勢いるので、こうした高度な音楽に対応できて、
即興できる人が、もっとほかにいるんじゃないかな。

アクースティックになったシマックダイアローグは、15年に来日していたんですね。
青山CAYでライヴをやったとのこと。気付くのが遅すぎました。

SimakDialog "GONG" Demajors no number (2019)
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