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サン・パウロのピアノ・マエストロ ラエルシオ・ジ・フレイタス [ブラジル]

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ラダメース・ニャターリをして、天才といわしめたラエルシオ・ジ・フレイタスの新作。
御年81歳のご本人は演奏に参加せず、総勢28名のミュージシャンが集まって、
ラエルシオの未発表曲を演奏したプロジェクト・アルバムとなっています。
ピアニストだけでも8人が参加していて、
クリストヴァン・バストス、エルクレス・ゴメスなどの名が並んでいます。

ラエルシオ・ジ・フレイタスは、ラダメース・ニャターリのセステートや、
メキシコ滞在時のタンバ4に在籍した、サン・パウロ出身の鍵盤奏者。
70年代には、エルザ・ソアレス、マリア・ベターニャ、マルコス・ヴァーリ、
クララ・ヌネスなど、多くの大物アーティストに作品を提供し、
アレンジャーとしても活躍して、サンバ/MPBの屋台骨を支えたマエストロです。

自身のソロ・アルバムで代表作として挙げられるのが、
80年にエルドラードから出たショーロ・アルバムですね。
すごくユニークというか、異色のショーロ作で、
発売当時ぼくもこのLPは、ずいぶん愛聴しました。
のちにCD化もされています。

ユニークなのは編成で、ラエルシオはオルガンをメインに弾き、
ベース、ドラムス、パンデイロのリズム・セクションがバックアップします。
そこに、ギター、カヴァキーニョ、バンドリン、トロンボーン、フルートなどが
曲によって加わるというフォーマットだったんですね。
ベースとドラムスがスウィンギーな演奏を繰り広げ、
バランソのフィールもたっぷりな、サンバ・ショーロならぬ、
バランソ・ショーロといった仕上がりになっていました。

レパートリーのなかには、19世紀のショーロを思わせる、
ノスタルジック・ムードたっぷりのピアノ・ソロもあったり、
エレクトリックのジャズ・ギターがリードをとるジャズ・ショーロがあったりと、
あとにもさきにも、こんなユニークなショーロ作品は聴いたことがありません。
バランソが流行した60年代でも、こんなショーロ・アルバムはなかったでしょう。

あの異色作に比べると、今回はショーロらしいショーロというか、
エレガントなピアノ・ショーロ・アルバムに仕上がっています。
ベース、ドラムスのリズム・セクションの付く曲でも、
バランソのようなフィールはなく、伝統的なサンバ・ショーロです。

参加したミュージシャンで、耳奪われたのは、ファビオ・ペロンのバンドリン、
ナイロール・プロヴェッタのクラリネット、ジョアン・ジェラルドのクラロン、
ジョルジーニョ・ネトのトロンボーンかな。
ショーロらしい美しいメロディの楽曲が並ぶなかで、
エルメート・パスコアールかと聞きまがう、アブストラクトなパートが
挿入される曲が2曲(‘Arismania’ ‘Ferragutiando’)あって、
そのどちらもがナイロール・プロヴェッタのアレンジ。
これはラエルシオの原曲にはない、ナイロールの仕業だろうな。
そんな遊びも含めて、ラエルシオの曲の魅力を引き出した、
最高のショーロ・アルバムです。

Laercio De Freitas "MODERNO" Sonora Prodçoes Artísticas no number (2022)
Laércio De Freitas "SÃO PAULO NO BALANÇO DO CHORO" Eldorado 278158 (1980)
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