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ティジャニ・コネに捧ぐ ソロマン・ドゥンビア [西アフリカ]

Solomane Doumbia  SÉGOU TO LAGOS.jpg

ジャケット中央にデザインされた、サックスを首から下げてトランペットを吹く人物は、
マリ音楽史に残る名門バンド、レイル・バンドを創立したティジャニ・コネ。
この写真は、ベニンのT・P・オルケストル・ポリ=リトゥモと共演した
77年のアルバリカ・ストア盤のジャケットから取られたもので、
この激レア盤を知るマニアには、なかなかにドキリとさせられるデザインであります。

思わずジャケットをのぞき込むと、
アルバムの主役、ソロマン・ドゥンビアが、右下隅にちっちゃく載っていますよ。
ソロマン・ドゥンビアとは、サリフ・ケイタのバンドで長年パーカッションを務めた人。
サリフとはアンバサデュール時代からの古い付き合いで、
サリフのソロ・アルバムのほぼすべてに参加しています。

本作ではソロマンと名乗っていますが、
アンバサデュール時代は、ソロ・ドゥンビアとクレジットされており、
サリフのソロ・アルバムでは、スレイマン・ドゥンブヤ、スレイマン・ドゥンビアなど、
ざまざまな名前でクレジットされていました。

そのソロマンがティジャニ・コネにオマージュを捧げた本作は、
ンゴニを中心としたアクースティックな音作りのレトロなマンデ・ポップで、
いまどき珍しいオールド・スクールのスタイルながら、
最近はこうしたサウンドがすっかり聞けなくなっていただけに、頬が緩みます。

ソロマンは、作編曲とギターを弾いていて、クレジットはありませんが、
控えめなキーボードや打ち込みも、おそらくソロマンによるものでしょう。
リズム・アレンジが多彩なのは、パーカッショニストらしい手腕ですね。
タイトル曲のみンゴニ不参加の、マンデ流儀のアフロビートとなっています。

フィーチャーされた二人の歌手は、おそらくグリオ出身者と思われ、
どちらもサビの利いた素晴らしいノドを披露しています。
ドラムスにソンゴイ・ブルースのナサナエル・デンベレ、
サックスとトランペットに、70年代マリ音楽のトリビュート集を出したベルリンの
ブラス・オーケストラ、ジ・オムニヴァーサル・イヤケストラのメンバーが参加しています。

ソロマンがオマージュを捧げるティジャニ・コネは、
26年セグー近郊のサンサンディングでグリオの家系に生まれた音楽家。
ンゴニやパーカッションを演奏し、やがてジャズに興味を持ち、
サックスとトランペットの奏者として名を馳せました。
マリ国営鉄道が経営するビュフェ・ホテル・ド・ラ・ガールの専属バンドの設立を託されて、
70年にレイル・バンドを結成。当初は歌手が不在だったことから、
ティジャニは、ニジェール川のほとりで安物のギターを弾きながら歌っていた、
アルビノの若者を雇おうと考えます。

それが、サリフ・ケイタなのでした。
当時のサリフは、教師になる夢に破れ、
バマコの市場で寝泊まりするホームレスに身をやつしていましたが、
人前で歌うのは、貴族の家柄を汚すことになると、ティジャニの誘いを断ります。
それでもティジャニは諦めず、その後も何度もサリフを熱心に口説き、
ついにレイル・バンドのリード・シンガーとなったのでした。
ティジャニの熱心なリクルートがなければ、サリフはバマコの乞食として、
生涯を終えていたかもしれません。

70年7月、レイル・バンドがサリフ・ケイタを迎えて初のパフォーマンスをしたときは、
サリフはバス・タオルで姿を隠して歌ったという伝説が残っていますが、
サリフの評判はすぐに広まり、レイル・バンドは一躍トップ・バンドになります。

本作のタイトルは、
ティジャニがマリとナイジェリアの架け橋となっていたことを示唆するもので、
じっさいマリでアフロビートを最初に演奏したのは、レイル・バンドでした。
77年にナイジェリアのレゴスで開催されたフェスタック77に、レイル・バンドは招かれ、
ティジャニはこのとき、フェラ・クティのカラクタ共和国も訪れますが、
大勢の妻と暮らすフェラの生活ぶりや、
メンバーが四六時中飲酒するコミューンの日常には、がっかりしたようです。

African Scream Contest.jpg

ティジャニはレゴスからの帰途、ベニンのプロモーターの誘いにのって、ベニンへ赴き、
T・P・オルケストル・ポリ=リトゥモとレコーディングをします。
これが冒頭話題にしたアルバリカ・ストア盤で、
A・B面1曲ずつのアフロビートをやっています。
A面の‘Djanfa Magni’は、アナログ・アフリカ盤 “AFRICAN SCREEN CONTEST” で、
ヴァージョン違いの短縮版を聴くことができます。

Tidiani Kone.jpg

ティジャニ名義のアルバムはごくわずかしかありませんが、アルバリカ・ストア盤より
重要なのが、亡くなるわずか前に録音された “DEMELI” です。
クリオ歌手をフィーチャーし、ティジャニはサックス、ンゴニ、ギターを演奏して、
伝統的なグリオ音楽に回帰した作品です。
ソロマンがオマージュを捧げた本作とともに、聴いてみてほしい作品です。
サブスクにもあるので、ぜひ。

Solomane Doumbia “SÉGOU TO LAGOS” Mieruba MRB-ML01-018 (2022)
Orchestre Poly-Rythmo, Les Volcans, El Rego Et Ses Commandos, Black Santiago, Discafric Band and others
"AFRICAN SCREAM CONTEST: RAW & PSYCHEDELIC AFRO SOUNDS FROM BENIN & TOGO 70S" Analog Africa AACD063
Tidiani Kone "DEMELI" Africa Productions/Mélodie LJAM01038-2 (2001)
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