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未配給で気付かれないカーボ・ヴェルデの才能 ネウザ [西アフリカ]

Neuza  BADIA DI FOGO.jpg

昔はセザリア・エヴォーラ、今はマイラ・アンドラーデと、
世間で評判になる(=業界が話題にする)カーボ・ヴェルデの歌手は、いつもピント外れ。
本当に魅力のあるカーボ・ヴェルデの歌手には、
ちっとも焦点が当たらないんだから、イラ立たしい限りなんですが、
昨年のルシベラの新作は、静かな評判を呼んでいるようで、嬉しくなりました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-07-12

ルシベラのような、どこまでも自然体で飾らない、控えめな歌い手に、
ジャーナリスティックな関心が集まるはずもなく、
マーケティングの対象になることもないので、
誰にも気付かれないままとなりかねません。
そんな知られざる、良い歌い手に光を当てるのが、
当ブログの役目でもあるわけですけれど、
そんな after you 好みの歌手を、また一人見つけちゃいましたよ。

それが、アメリカ在住カーボ・ヴェルデ人歌手のネウザ。
85年サンティアゴ島、プライア生まれで、86年生まれのルシベラのひとつ年上。
13年にデビュー作を出し、ぼくが見つけた2作目は18年作だというのだから、
5年も気付けずにいたわけですね。それもそのはず、
本作はアメリカのカーボ・ヴェルデ移民コミュニティ制作のインディもの。
こういうアルバムは、コミュニティ外にまったく流通しないから、知る由もありません。
デジタル・リリースはされていますが、
CDは、ライヴ会場などで手売りする分しか作らなかったんじゃないかな。

ギター、カヴァキーニョ、ベース、コーラスを担当するカク・アルヴェスがアレンジ。
ヴァイオリンにキム・アルヴィスも参加していて、サックスのトティーニョもいます。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-02-26
プライアで録音、パリでミックスするという、しっかりとした制作で、
ルサフリカあたりが配給すれば、ルシベラと同様、
インターナショナルに十分通用する作品なのに、ああ、もったいない。

本作でネウザは、さまざまな作曲家から提供された曲に作詞をしています。
5歳の時に亡くなった歌手の母親にオマージュを捧げた ‘Izilda’、
学校へ行かせてもらえず、水汲みに何キロも歩く家事労働をさせられ、
ボーイフレンドができないような髪型を強制され、
従わなければ体罰を奮われる女の子の物語 ‘Barra Pó’、
幼い頃のいじめの体験を吐露した ‘Badia Di Fogo’ など。

このタイトル曲では、家族がフォゴ島から移住してきたために、
ネウザが話すフォゴ島訛りのクレオールを笑われたという、
幼い頃の悔しさを題材に、フォゴの文化を讃えているそうです。

モルナやコラデイラにフォゴ島のリズム、タラバ・バシュなども交えて歌った10曲、
アコーディオンの響きが、ネウザの柔らかな歌声を引き立てます。
ルシベラを気に入った人に、ぜひ聴いてほしいな。

Neuza "BADIA DI FOGO" Harmonia no number (2018)
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