パフォーマンスよりも音楽性 バルバトゥーキス [ブラジル]
ショランド・アス・ピタンガスの新作で、思いがけずバルバトゥーキスの名を聞いて、
懐かしくなって彼らの15年作を引っ張り出してきました。
175ミリ角のフォトブック仕様という特殊仕様のCD。
彼らの代表作で、ぼくのお気に入りの一枚だったのに、
これまで記事にしていなかったので、取り上げておきますね。
バルバトゥーキスは、95年にサン・パウロで結成された
ボディ・パーカッション・グループ。
顔からつま先に至るまで、全身のありとあらゆる場所を叩きに叩きまくって
ビートを作っていくという、驚異的なパフォーマンスを繰り広げます。
いわばビート・ボックスの発展形ともいえるグループですね。
こういうグループの特徴として、視覚的要素の方が圧倒的に強力で、
CDなどの音源だけで聴くと、魅力半減になりがちなんですが、
このグループに限っては、そうじゃないんです。
本作でもわかるように、途方もないアイディアが随所に詰め込まれていて、
実験性に富んだ音作りもふんだんに取り入れていながら、
それを鮮やかにポップな音楽性に仕上げるスキルが、彼らにはあるんですよ。
それをはっきり認識できるのが、
ぼくの天敵(笑)エルメート・パスコアールをゲストに迎えた曲。
エルメートはあいかわらずのエキセントリックなヴォイス・パフォーマンスを
繰り広げているんですけれど、バルバトゥーキスの見事なパフォーマンスが
エルメートの毒々しさを中和して、ポップな音楽性に昇華させています。
エルメート自身がやると、
悪しきフリー・ジャズみたいになるプリテンシャスなパフォーマンスを、
ちゃんと豊かな音楽に変換できる知力が、バルバトゥーキスにはあるんです。
本作でも、スカとフラメンコを融合したり、ケチャからアイディアを借りてきたり、
マシーシというブラジル音楽の古層にアプローチして
ピシンギーニャにオマージュを捧げるなど、
きわめてインテレクチュアルな試みをしながら、
肉体感溢れる音楽を生み出しているところが、このグループの偉さでしょう。
本作は16年にUKのミスター・ボンゴからも発売され、
世界各地の音楽祭に招かれて活躍しています。
日本にも来てくれないかな。ぜひ生を観てみたいですね。
[CD Book] Barbatuques "AYÚ" MCD MCD468 (2015)
2023-05-10 00:00
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