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アフロ・グルーヴを勝ち取ったフランス白人二人組 イレケ [西・中央ヨーロッパ]

Ireke  TROPIKADELIC.jpg

アンダードッグ・レコーズの新作は、
アルト・サックス他のマルチ奏者兼ビートメイカーのジュリアン・ジェルヴェと、
ギター他のマルチ奏者兼ビートメイカーのダミアン・テッソンの二人組、
イレケのデビュー作。二人ともフランス白人で、
イレケ(サトウキビ)というヨルバ語のユニット名に、志向する音楽性が示されています。

アフロビートばかりではなく、
さまざまなアフロ系リズムをしっかりと血肉化しているのには、感心しました。
ヨーロッパ白人によるポリリズムの咀嚼も、こういうレヴェルにまで達したのかと、
思わず感慨にふけっちゃいますねぇ。
聴く前は、「トロピカデリック」なんて尻軽なタイトルなので、
もっと安直なトロピカル・ダンスものを想像してたんですが、とんでもなかったなあ。
数々のバンドやセッションで腕を磨いてきたようですよ。

なんでも、ジュリアン・ジェルヴェはコンゴ人ギタリスト、
キアラ・ンザヴォトゥンガのバンドで鍛えられたんですね。
キアラは、ネグロ・シュクセから
グラン・カレのアフリカン・ジャズと名門楽団を渡り歩き、ナイジェリアへ渡って、
フェラ・クテイのエジプト80の一員になったヴェテラン・ギタリスト。
ルンバ・コンゴレーズとアフロビート双方のマスターであるキアラから、
しっかりとアフリカン・リズムの真髄を学び取ったのでしょう。

一方、ダミアンは、ダブ・マスターとしてのトレーニングを受け、
国際的に活躍するダブ・アーティストたちとともに活動して、
レゲエとジャズ・ファンクのシーンを横断しながら、演奏活動をしてきたといいます。
フェラ・クティやキング・タビーをヒーローとする二人が、
パット・トーマス(ガーナ)、T・P・オルケストル・ポリ=リトゥモ(ベニン)、
エルネスト・ジェジェ(コート・ジヴォワール)、
レ・ヴィキング(グアドループ)を参照しながら、
アフリカ~カリブのさまざまなリズムを研究してきたんだそう。

本作では二人が作曲したマテリアルに声を与えるため、
二人の活動拠点のヴァンデやナントのシンガーのほか、
二人がよく知るカメルーン、ブルキナ・ファソ、ラオス(!)のシンガーに
歌詞を依頼して、歌ってもらっています。
有名ゲストとかじゃなくて、こういう自分たちの活動範囲の仲間たちを集めて
フィーチャリングするところも、好感が持てますね。

生のパーカッションとプログラミングのビートが絡んで、
シンセ・ベースと手弾きのギターがグルーヴをかたどっていく
オープニングから、ゴッキゲン。
アルトとゲストのバリトンのサックス2管が、サウンドに厚みを加えていきます。
どの曲もビートメイキングがしっかり作られているから、キモチよく聞ける。
ポップなセンスとダンス・オリエンテッドなサウンド・プロデュースが
見事にドッキングした、爽やかなアフロ・グルーヴ・アルバムです。

Ireke "TROPIKADELIC" Underdog UR840872 (2023)
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