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世界的な交響楽団と再構築したマレイ伝統歌謡 ダヤン・ヌールファイザ [東南アジア]

Dayang Nurfaizah  BELAGU II.jpg   Dayang Nurfaizah  BELAGU II  back.jpg

マレイシアから伝統歌謡が聞こえなくなって、はや10年。
ポップとR&Bばかりになってしまって、
自分の視界からすっかり消えてしまっていたマレイシアですけれど、
目を見開かされるゴージャスな伝統歌謡作が登場しました。

それがなんとマレイシアのR&Bシンガー、
ダヤン・ヌールファイザの新作なのだから、オドロキです。
81年サラワク州都クチン生まれのダヤン・ヌールファイザは、
99年のデビュー以来、マレイシアのポップ/R&Bシーンで最高の人気を誇り、
02年はマレイシアのレコード大賞AIMで最優秀楽曲賞を受賞し、
00年代のトップ・セールスの記録を樹立した大スター。

とはいえ、当方その時代のCDを1枚も買っておらず、
名前を知るだけの人だったんですが、
21年に初のマレイ伝統歌謡アルバムを制作したことで注目するようになりました。
1500部限定のCDを買いそびれている間に、その続編が出てしまったんですが、
この続編がとてつもなく絢爛豪華なレコーディング。

マレイシアのミュージシャンとともにハンガリーのブダペストへ赴き、
ブダペスト・スコアリング交響楽団と共演したんですね。
たった2日間のレコーディングで
全9曲を仕上げたというのだから、これぞプロフェッショナル。
プロデュースとアレンジは、前作同様ピアニストのオーブリー・スウィトが務めていて、
制作チームによる事前準備やリハーサルを抜かりなくやったのでしょうね。

ブダペスト・スコアリング交響楽団のマエストロ、ペテル・イレーニが
マレイ伝統歌謡の解釈に心を砕いたという発言からも、
相互理解がコラボレーションの成功を生み出したことがよく伝わってきます。
レパートリーは、P・ラムリー作の3曲に、アフマド・シャリフ、アフマド・ジャイスほか、
オーブリー・スウィト作の新曲も1曲用意されています。

ダヤン・ヌールファイザの丁寧な歌唱ぶりが、見事です。
アスリ、ジョゲット、ザッピンといった伝統歌謡に求められる表現力は十分で、
情感の込め方や繊細なコブシ使いの技量も確かですねえ。
‘Ketipang Payung’ のチャーミングさなんて、
往年のサローマをホウフツさせるようじゃないですか。

フォトブック形式でリヴァーシブル装丁の特殊仕様ジャケットには、
サラワクの伝統的な刺繍で頭から肩を覆うベールの
ケリンガム keringkam をまとったヌールのポートレートのほか、
ブダペストの観光スポットで撮られたフォト・セッションに、
ブダペスト・スコアリング交響楽団との録音風景など、
多数の写真が収められています。

最初このアルバムを聴いたとき、まっさきにウクライナ国立管弦楽団の伴奏で歌った
ヒバ・タワジの14年作 “YA HABIBI” を思い浮かべましたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2014-11-29
この衝撃は、あのアルバム以上かな。
心がほっこりするラストの余韻まで、今年最高のアルバムです。

Dayang Nurfaizah "BELAGU II" DN & AD Entertaintment no number (2023)
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