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ポップ・ミュージックを無効化したグローカル ファイザル・モストリックス [東アフリカ]

Faizal Montrixx  MUTATIONS.jpg

ウガンダの電子音楽といえば、ニェゲ・ニェゲ・テープスの独壇場といった感じですけれど、
このファイザル・モストリックスは、グリッタービートから登場。
カンパラのエレクトロニック・ミュージック・シーンで
中心的存在のパフォーマーだといいます。
プロデューサー、DJ、コンポーザー、ダンサーという、
さまざまな顔を持つエンタテイナーで、いわば現代的な大衆演芸家なんでしょう。

本作を聴いて、すぐに音楽家じゃなくて大衆演芸家というイメージが湧いたのは、
既存の音楽というか、楽器演奏していた人じゃなさそうと感じたからです。
DAWで音楽制作をする人って、既成の音楽の作法にとらわれずに
音楽を作れる自由さがありますよね。
ポピュラー音楽が発展してきた経路をすっとばして、
ローカルな民俗音楽と電子音楽を接続させた面白さを感じるんです。

アフロフューチャリズムの可能性って、
ポップ・ミュージックを無効化したグローカルにあるのかも。
モストリックスは、トラック・ドライヴァーの父親がケニヤやコンゴから持ち帰った
カセットやCDを通じて、ポップ・ミュージックも聴いていたそうですけれど、
そうした音楽を通過した形跡はまったく聞こえてきません。

地元の割礼儀礼カドディで演奏されるトランシーなリズムを、
ヒップ・ホップ、テクノ、ディープ・ハウス、アマピアノなどを参照して
クリエイトしたのが、ファイザルの音楽といえるようです。

本作には、フィールド・レコーディングされたフォークロアな歌や、
コール・アンド・レスポンスの歌、太鼓、笛、親指ピアノの演奏が
ふんだんにカットアップされています。
そうしたローカルなサウンドスケープとビートが、彩としてではなく、
音楽のベースとしてしっかりと根を張っているからこそ、
電子音楽になじみのない当方でも、強烈に惹かれるみたいです。

Faizal Montrixx "MUTATIONS" Glitterbeat GBCD141 (2023)
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